米Texas Instruments Incorporatedは,米National Semiconductor Corp.を65億米ドルの現金で買収すると発表した(ニュースリリース)。National Semiconductor社は,アナログ半導体市場における有力企業の1社だ。特に,オペアンプなどのシグナル・コンディショニング製品や,スイッチング・レギュレータICなどのパワー・マネジメント製品などにおいて高い競争力を持つ。TI社は,このNational Semiconductor社を買収することで,アナログ半導体市場における競争力をさらに高めることを狙う。TI社の社長会長兼CEOであるRich Templeton氏は,「今回の買収は,成長を確固たるものにするために行った。両者の製品を組み合わせることで,競合他社にはない広範で多種多様な製品群を顧客に提供できるようになるだろう。さらに,セールス・チームの陣容は,現在のNational Semiconductor社の10倍となり,製品ポートフォリオをより多くの市場と顧客に提供できるようになる」とコメントしている。
今回の買収によって,National Semiconductor社は,TI社のアナログ事業部門の一つとなる。現在稼働しているNational Semiconductor社の生産拠点,すなわち米メイン州,スコットランド,マレーシアの半導体工場は,今後も操業を継続する。米カリフォルニア州のサンタクララにあるNational Semiconductor社の本社も引き続き,その役割を担うとしている。
National Semiconductor社の2010年の売上高は約16億米ドルだった。これをTI社の売上高に加算すると,TI社の総売上高に占めるアナログ半導体の割合は約50%になる。さらに,世界全体のアナログ半導体市場におけるシェアも高まる。2010年におけるTI社のアナログ半導体の売上高は約60億米ドルで,市場シェアは約14%だった。これにNational Semiconductor社の分が加わると,売上高は76億米ドルで,市場シェアは17%に高まる。第2位の伊仏合弁STMicroelectronics社(市場シェアは約10%)との差がさらに開き,第1位の座が盤石なものとなる。
この記事の掲載当初,第3段落においてTI社のアナログ半導体の売上高は「約60億円」としていましたが,正しくは「約60億米ドル」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。