米Cisco Systems社は、同社の消費者向け製品を担当する事業部を大幅に再編すると発表した(発表資料)。この再編の目玉は、同社が手掛けているビデオ・カメラ「Flip」の製造・販売を中止する予定であること。その他、2010年10月に公開した消費者向け遠隔会議システム「Cisco umi telepresence」(Tech-On!関連記事)の技術を同社の企業向け遠隔会議システムを手掛ける事業部に移管することや、同社の家庭内ネットワーク製品を担当する事業部の利益向上などが含まれる。さらに、コンテンツ業界向けのWebサイトを作成・運営するサービス「Cisco Eos」(Tech-On!関連記事)に採用している動画関連の技術を評価しなおす。
今回の再編に向けて、Cisco社は2011年7月末までに3億米ドルの費用を掛けるという。同じ期間中に、550人の社員を解雇する予定もある。
5億9000万米ドルで買収した企業を「捨てる」
Cisco社は2009年、Flipのビデオ・カメラ製品を手掛けていたベンチャー企業米Pure Digital Technologies社を約5億9000万米ドルの金額で買収した(Tech-On!関連記事)。当時、Flipのビデオ・カメラ製品は、ユーザーにとって手軽に利用ができることや、オンライン動画配信サービスとの連携が優れていることで知られていた。今回の再編を検討する段階において、Flipの事業部を他の企業に販売することを考えたかどうかの質問に対して、Cisco社は「いろいろな選択肢を検討した結果、事業部を閉めることを決めた」という。
Cisco社は、同社の利益率を高めるように、金融業界から圧力を受けていたとされる。2011年4月5日に公開された社内向けのメモで、同社のChairman兼CEOであるJohn Chambers氏は「我々は、我々の投資先を失望させた上、社員を混乱させてしまった。Cisco社の成功の源泉となる信頼性を失っており、それをもう一度元に戻す必要がある」との考えを示していた。このため、Cisco社は近いうちに何らかの手を打ってくると指摘されており、今回の再編はそれの一つだとみられている(同メモ)。
Cisco社がこれまで消費者向け製品で採ってきた戦略は、同社の通信事業者向け事業で生かされるとみられている。例えば、Cisco社の顧客が消費者向けサービスを強化したいときに、Cisco社は同社の経験をCisco社の製品に合わすことができるという具合である。こうした製品の例が、同社が2011年1月に公開した動画配信プラットフォーム「Videoscape」である(Tech-On!関連記事)。今回の再編の発表資料でも、Cisco社の消費者向け事業で経験してきたことが、他の事業に反映ができることに触れている。