IPアドレスの管理を担う「地域インターネット・レジストリ(RIR)」の中で、アジア・太平洋地域担当のAPNICは2011年4月15日、IPv4アドレスの在庫が事実上枯渇したと発表した(APNICの発表資料、JPNICの発表資料、関連ブログ「まもなく新規供給が止まる、あの『資源』」。具体的には、在庫が残り「/8」ブロック1個(約1677万個)になったことで、これまでのルールによるIPv4アドレスの配布手続きを終了した。
これにより、アジア・太平洋地域の通信事業者は、IPv4アドレスを必要な数レジストリに新規申請することができなくなった。RIRのIPv4アドレス在庫が枯渇したのはこれが世界で初めてである。今後は、申請する事業者の規模によらず、1組織に「/22」ブロック1個を一回限り、つまり最大で1024個しか配布しないルールになる。
APNICのIPv4アドレスの在庫は、中央在庫が2011年2月3日に枯渇した時点でおよそ9000万個超あった。ところが、そこから中国や日本の大手通信事業者がIPv4アドレスの激しい争奪戦を展開した(日経エレクトロニクスの解説記事「ついに枯渇のIPv4アドレス、IPv6で新事業が開花へ」)。中国の通信事業者は、例えば中国China Telecom社(中国通信)1社でも実際には多数の地域法人があり、それぞれが独立にIPv4アドレスを申請して数百万個の大型ブロックを取得していった。日本のNTTコミュニケーションズは、一度に「/9」(約800万個)という超大型ブロックを一度に取得した。こうしたことでわずか2か月余りで約7000万個が在庫から消えた。
4月に入ると争奪戦はいっそう加熱した。従来1日で10件程度だった配布手続きが4月になると1日数十件に増え、4月12日は同261件と、銀行のとりつけ騒ぎのような様相を呈した。そのうち、246件が中国の事業者への配布だった。
地域在庫の枯渇が2020年になる地域も
ちなみに、日本インターネットインフォメーションセンター(JPNIC)は2011年3月24日時点で、その他の地域在庫の枯渇時期を、欧州・中近東地域が2012年6月、北米地域が2013年4月、中南米地域は2015年7月、アフリカ地域に至っては2020年4月と予測している。アジア・太平洋地域のIPv4アドレス在庫の枯渇が突出して早かったことになる。