民生機器関連で欧州最大の展示会「IFA2011」(2011年9月2~7日、ドイツ・ベルリン)の報道関係者向けプレイベント「Global Press Conference(GPC)」(同4月14~17日、スペイン・アリカンテ)では、デジタル家電やIT機器、自動車、市場調査などの企業がそれぞれ最新の動向を発表した。例えば、韓国Samsung Electronics社は「スマートTV」、ドイツSiemens社は電力の省エネルギー、台湾Hannspree社はタブレット端末、ドイツBosch社は節電家電、米Ford社は自動車、ドイツWMF社はコーヒー・メーカー、米DisplaySearch社は市場調査についてそれぞれ発表した。その中でも、DisplaySearch EuropeのPaul Gray氏(Europe TV Research Director)の調査報告が注目された。
同氏のスピーチで、特に話題を呼んだのが、「テレビの新機能への好みが、国によって意外なほど違っている」という指摘だ。「フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、ロシアの各国で1000人の消費者に尋ねた調査では、これ以上テレビに欲しいというキラー・アプリケーションは見つからないが……」と前置きしつつ、「各国によって意外なほどニーズが違うことが分かった」と述べた。
Gray氏は、「省電力はあらゆる国で最もニーズが高いアイテムだ。特にドイツではそう。3次元(3D)テレビはイタリアやロシアで人気。“コネクト・テレビ”はフランス、イタリア、ロシア、イギリスでニーズが高い」と言う。同氏に、講演後にその理由を尋ねると、次のような答えが返ってきた。「一つには言葉の問題があります。言葉が文化を形成していますから、違いの理由になります。また、欧州ではポルトガルを除いて、各国で複数の言語が使われています。また、方言も多いです。このような違いが、テレビに対するニーズの違いに反映されているのでしょう」。
欧州は決して一様ではない。市場特性は「フラグメント(断片的)」という指摘がGPCでは多くあったが、それを裏付けている格好だ。
今回のGPCでは、シャープ、東芝、パナソニックなど日本メーカーは“サポーター”として名を連ねている。しかし、メディア対象のプレゼンテーションを行う企業は1社もない。これほど効率的に世界のジャーナリストに直接自社を宣伝できる場は珍しいのに、ジャーナリストの心を掴む(つかむ)良い機会なのに、日本メーカーの存在がこれほど薄いのは全く残念である。2012年の本イベントには積極的に参加すべきだと感じた。