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完成したシャープ・エコハウス。多結晶型太陽電池パネルを9kW分屋根に載せた。建屋面積は271.24m2で、平均的な一戸建ての約2倍だという。
完成したシャープ・エコハウス。多結晶型太陽電池パネルを9kW分屋根に載せた。建屋面積は271.24m2で、平均的な一戸建ての約2倍だという。
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見える化に利用するスマートタップとタブレット端末。これらは2011年度内に製品化予定。
見える化に利用するスマートタップとタブレット端末。これらは2011年度内に製品化予定。
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部屋の間取りと、運転を制御した家電(ここではエアコン)を表示させたタブレット端末の画面をテレビにも表示。
部屋の間取りと、運転を制御した家電(ここではエアコン)を表示させたタブレット端末の画面をテレビにも表示。
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部屋のあちこちにあるセンサ類
部屋のあちこちにあるセンサ類
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エコハウスとの間で充放電を可能にした三菱自動車のEV「i-MiEV」
エコハウスとの間で充放電を可能にした三菱自動車のEV「i-MiEV」
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充電プラグならぬ、「充放電プラグ」
充電プラグならぬ、「充放電プラグ」
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新たに開発したパワー・コンディショナー(中央にあるもっとも大きな筐体)と、エリーパワー製蓄電池(パワコンの左)
新たに開発したパワー・コンディショナー(中央にあるもっとも大きな筐体)と、エリーパワー製蓄電池(パワコンの左)
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タブレット端末で、太陽電池の発電量、蓄電池やEVの充電量や充放電の状態、住宅内の消費電力などを見える化した画面。
タブレット端末で、太陽電池の発電量、蓄電池やEVの充電量や充放電の状態、住宅内の消費電力などを見える化した画面。
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 シャープは2011年6月8日,「シャープ・エコハウス」を大阪府堺市の工業団地「グリーンフロント堺」内に完成させたと発表し,報道陣に公開した。電力消費の最小化と住空間の快適性を両立させ,「節電を極める」(同社)技術の実証実験を6月中に開始する。予備的なデータ収集は既に始めたとする。

 このエコ・ハウスは,現在家庭で利用可能な省エネ,創エネ,蓄エネ技術の多くを盛り込んで作られている。具体的には,出力9kWのシャープ製太陽電池,人感センサや照度センサと連動するLED照明,家電機器の消費電力の「見える化」システム,HEMS(home energy management system)で制御可能なエコ家電機器群,直流(DC)で動作する「DC家電」も導入した。さらには,8kWhのエリーパワー製蓄電池,三菱自動車製電気自動車(EV),およびそれらと連携する独自開発のパワー・コンディショナーなどを導入した。

「年間ベースで正味の消費電力量ゼロ」が可能

 資源エネルギー庁の2010年の資料では,日本での全消費電力量に家庭の消費分が占める割合は約29%と小さくない。シャープによれば,今回のエコハウスは、電力系統から受電する消費電力量を、年間ベースでは実質的にゼロにできる見通しであるという。つまり,年間では太陽光発電の発電量で家庭で利用する電力量をすべて賄えることになるという。

 その内訳はこうなる。最新のエコ家電やLED照明への買い替えの効果で消費電力量を従来の消費電力量に対して年間約30%削減できるとする。また,電力の見える化で同15%減,HEMSを用いた自動制御機能の利用で同10%減,太陽光発電による発電と蓄電池やEVの連携で同35%減,直流家電の利用で同10%減をそれぞれ実現できるとする。これらを合計すると元の消費電力量の100%減となる。

 このうち省エネ関連の,見える化システムとHEMSは,電源アダプタ「スマートタップ」とそのゲートウエイ機器、およびタブレット端末「ガラパゴス」、そしてそのタブレット端末と無線LANで通信する機能を備えたLED照明器具や家電製品群から成る。それぞれの役割は以下のようになる。スマートタップが家電機器の消費電力データを収集する。そのデータは、センサ用無線規格のZigBeeでゲートウエイを介してタブレット端末に送られ、各家電機器の消費電力が分かる、すなわち、見える化する。

 タブレット端末は、無線LANで各家電と通信する機能も備える。言い換えると、各家電のリモコン端末としても機能する。寝室にあるLED照明の調光や調色もタブレット端末でできるようにした。タブレット端末には、照明や家電の消費電力を自動制御するHEMSのプログラムも実装しており、家電とEV全体の司令塔の役割を果たしている。LEDバックライトの照度を変えることでテレビなど個々の家電の消費電力を変更できるほか、「家まるごと節約運転モード」を選ぶと、外気温などの情報を取り入れながら、完全に自動的に各家電の運転を制御する。

V2Hを初めて公に実証実験

 太陽電池や蓄電池,EVなどの創エネ・蓄エネのシステムには,「三菱自動車のEV『i-MiEV』を基に,業界初のEVの充放電機能の利用を実現した」(シャープ)という(関連記事)。つまり,太陽電池や蓄電池の出力をEVの蓄電池に充電するだけでなく,EVの蓄電池に貯めた電気を放電して家庭の蓄電池に貯めたり,家電機器で利用できる「V2H(vehicle to home)」機能を実装した。「EVの充電と放電の出力はそれぞれ最大8kW。フル充電からの放電は2時間は持つ」(同社)という。

 EVに充電するか、EVから放電するかは,タブレット端末でのタッチ操作で切り替えられる。さらにパワー・コンディショナーには,停電時などに自動的に電力系統を切り離し,代わりに家庭内の蓄電池やEVの蓄電池から放電して,家電機器への給電を確保する機能も実装した。住宅内には,蓄電池やEVからの電力を利用するための専用のコンセントが用意された。

エコキュートも直流で稼働

 このエコハウスでは,太陽電池や蓄電池からの直流の出力を交流(AC)に変えることなく,DC給電することで動作するDC家電製品の実証実験も行う。具体的には,エアコン,テレビ,LED照明器具,冷蔵庫,オール電化住宅向けの給湯器(エコキュート)といった家電製品の一部をDC対応にして,ACで動作する従来の家電群との消費電力の差を比較する実験である。

 ちなみに,DC家電に入力する直流の電圧は300V。実際は各DC家電内でこれをさらにDC-DC変換して利用する。「将来的には,家電のいくつかは,DC-DC変換なしで動作するように変わるのではないか」(シャープ)。

家全体がロボットのように動作

 この他、エコハウスの各部屋や廊下にはあちこちにカメラや照度センサ、人感センサが埋め込まれており、人の移動に合わせて照明が点灯・消灯したり、ある部屋のテレビで見ていた番組が、移動した先の部屋にあるテレビに自動的に映し出されたりする機能が実装されている。

 シャープ 常務執行役員 研究開発本部長 兼 知的財産権本部長の水嶋繁光氏は、「この家を人間に例えると、HEMSが脳、通信機能とカメラ、センサ類が神経系、パワー・コンディショナが心臓、配線網は血管、そこを流れる電流は血液になる」とした。さらに、「他のハウスメーカーから、これほど完成度の高いエコハウスを見たのは初めてだと言われた」(同氏)として、既に多数ある他メーカーのエコハウスとの違いを強調した。

 シャープは,これらのシステムのうち,スマートタップとタブレット端末から成る見える化システムを,2011年度内にも製品化する計画も明らかにした。さらに,制御機能を持つHEMSとそれに対応した家電製品,および蓄電池などは2012年度以降に製品化するという。「利用する通信回線は基本的に無線が多いので,既築の家や家電の少しずつの買い替えにも対応しやすい」(シャープ)。

 一方で,DC家電やすべてのシステムのトータル・ソリューションの展開には数年から10年近い時間が必要かもしれないという。「トータルな展開は,新築の家が前提。DC家電は安全性などについての社会の認知が必要」(シャープ)であるためだ。