PR

 九州大学大学院工学研究院の石原達己教授の研究グループは、ディーゼルエンジンに利用されている排ガスフィルターであるDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)にたまる黒鉛状粒子(PM)を酸化して除去する酸化触媒として、Pr6O11(酸化プラセオジム)・CeO2(酸化セリウム)が優れた酸化性能を持つことを明らかにした。

 現在、ディーゼルエンジンの排ガスを浄化するために、DPFを取り付け、微細な黒鉛状粒子などを濾過(ろか)している。DPFは長時間使うと、細かな黒鉛状粒子などがフィルター材料の表面を詰まらせ、流路抵抗が増える可能性があるために、ある程度たまった黒鉛状粒子を酸化させ、燃やすことで除去している。

 現在、黒鉛状粒子を燃やすやり方としては、いろいろと工夫されているが、酸化触媒としてはPt(白金)・CeO2が用いられ始めている。このPt(白金)・CeO2の酸化触媒は、「Ptが高価であり、かつ酸化活性がそれほど高くないという課題がある」と石原教授は説明する。この課題に対して、石原教授の研究グループはPr6O11・CeO2が有力な代替材料になるとの可能性を示した。

図1○上側にあるPr4.8Bi1.2O11粒子の表面に、多数の微細なCeO2粒子が付着・分散している電子顕微鏡写真(九大の石原教授が提供)
[画像のクリックで拡大表示]

 Pr6O11・CeO2の複合酸化物は、微細なCeO2粒子がPr6O11粒子の表面に多数付着している(図1)。石原教授の研究グループは、この多数付着しているCeO2粒子の直径を10nm以下に微細化すると、黒鉛粒子の燃焼開始温度が250℃以下となり、排ガス自身が持つ排気温度で燃えるようになり、黒鉛粒子が燃焼する見かけの活性化エネルギーが下がることを明らかにした。

 CeO2粒子は微細化すると、表面エネルギーの増加によって表面に引っ張り応力が働き、これに対応するようにCeO2結晶の格子内に、酸素原子が欠落した空孔(ベーカンシー)が増える。酸素原子の空孔が増えると、酸素原子が拡散しやすくなり、高い酸化活性を持つようになると推論されている。

 同時にPr6O11酸化物側にも工夫を凝らした。Pr6O11酸化物は、Pr原子は価電子が3価と4価の状態のものが混じっている。このため、Pr4.8Bi.1.2とPr原子に3価のBiを少し混ぜることで、Pr6O11酸化物の方も酸素原子の空孔が増えるように工夫した。この結果、Pr4.8Bi1.2O11酸化物の表面に多数付着しているCeO2粒子での酸素の移動度が高まり、酸素の供給量が増える結果、黒鉛粒子を酸化させる触媒活性が向上し、炭素が燃えやすくなると推論している。

 現在、石原教授は、物質・材料研究機構(NIMS、茨城県つくば市)が2009年に設けたナノ材料科学環境拠点(GREEN)のプロジェクトにも参加している。今後はNMR装置を用いる同位体の17Oを使った観察によって、酸素原子の動きを解明し、高活性な酸化触媒として働く機構を解明し、ナノサイズのCeO2粒子の酸化活性機構を解明する計画である。