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 第41回信頼性・保全性シンポジウムが東京で7月14日と15日に開催された(主催は日本科学技術連盟)。14日午後には,半導体や電子部品の故障解析と信頼性をテーマにしたセッションが二つあった(Session 1とSession 2)。両セッションで,発表は合わせて6件だった。講演者の所属機関は,東芝,浜松ホトニクス,東京大学,ルネサス エレクトロニクス,ソニー,京セラである。

図1●講演する田中 政樹氏
Tech-On!が撮影。
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図2●DRAMパッケージ用樹脂の再評価結果
ルネサスのデータ。
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 筆者の独断で恐縮だが,インパクトが大きかったのが,ルネサスの講演である。講師は田中 政樹氏(品質保証統括部 MCU品質保証第一部 シニアエキスパート)が務めた(図1)。同氏は,日立製作所で30~40年ほど前に発生した,DRAMのパッケージの耐湿性に関するトラブルについて紹介した。このトラブルが,日立内ではなく,公の場で発表されるのは,今回が初めてだという。一連のトラブルで学んだ教訓や知見を,信頼性のエンジニア間で広く共有することが重要だと考えて,今回の発表に至ったようだ。

 田中氏の説明によれば,日立は1970年ごろに,初めてICのプラスチック・パッケージを実用化し,それをDRAMに適用した。プラスチック・パッケージは日立のDRAMのセールス・ポイントの一つになっていたようだ。このプラスチック・パッケージに使う樹脂の選択に当り,候補は最終的に2種類に絞られた。そして,PCT(Pressure Cooker Test)と呼ぶ加速試験を行い,その試験で寿命が長いと判断された樹脂Aが選ばれた。PCT試験は121℃・湿度100%の高温・高湿度での加速試験である。

 ところが出荷して1~2年もすると,樹脂Aを使って封止したDRAMでAl配線が腐食するというトラブルが頻発した。出荷量の10%に上る製品もあった。PCT試験をパスしたICのトラブルで,日立社内では「PCT事件」と呼ばれていたという。その事件が発生して,再度,樹脂AとPCT試験で落第した樹脂Bを使って,耐湿性に関する寿命試験を行った。

 すると,65℃など低温では,樹脂Bの方が寿命が長いという結果が出た(図2)。つまり,実使用環境では,PCT試験に強かった樹脂Aよりも樹脂Bの方が長寿命なことが判明した。ここで得た教訓は,「信頼性を評価する際に加速試験は万能ではなく,実使用環境に近い試験を優先すべき」ということだった。