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 福島第1原子力発電所の事故をきっかけに、反原発の動きが強まり、日本各地にある定期点検中の原子炉の再稼働にメドが立たない。電力不足は今夏にとどまらず、夏と冬が来るたびに、大幅な節電を強いられる可能性が高い。

図1 国内での電力利用の内訳
モータを省エネ化することが、電力消費の削減に大きくつながる。(図:新機能素子研究開発協会の資料を基に本誌が作成、初出は日経エレクトロニクス2011年5月2日号)

 なるべく企業活動や個人の生活に影響を与えることなく、節電できる方法はないものか。そこで是非、国や企業に検討してほしいのが、ビルや工場などにある様々な機器に組み込まれたモータの動作を効率化したり、省エネ型に交換したりすることである。モータは“黒子”なので照明のように目に見えないが、マンションやビルの換気や水循環あるいはエレベータやエスカレータ、工作機械、空調装置など、あらゆるところに使われている。日本国内の電力消費量のうち、モータを搭載した機器が消費する電力は実に、全体の57.3%を占める(図1)。もし、全モータを平均で26%省エネ化できれば、電力会社が求める15%の電力削減を達成できる。

 モータだけで26%も省エネ化するのは相当ハードルが高いのではと思われるかもしれない。しかし、実現できる可能性は十分にある。というのも、現在稼働中のモータの多くは省エネ性能が低い上、効率の悪い運転をしているためだ。

高効率なモータへの変更で10%改善

 経済産業省の試算では、モータの全消費電力の9割以上を3相誘導モータが占めている。その3相誘導モータのうち、実に97%が効率の低い「IE1」と呼ばれる種類のものである。

 三菱電機のモータのカタログによるとIE1相当のモータの場合、3.7kWのモータで総合効率75%が程度である(図2)。これに対して、高効率のモータは90%を超える。つまり、モータを交換するだけで15ポイントも効率が改善するのだ。モータの容量によっても、その効果の度合いに幅があるが、小容量のものだと5ポイント、大容量のものだと20ポイントも効率が向上する。

図2 高効率モータの総合効率
モータを高効率なものに変更するだけでも、効率を10%前後向上できる。(図:三菱電機の資料を基に本誌が作成、初出は日経エレクトロニクス2011年5月2日号)

 これに加えて、モータの回転数をきめ細かく制御することで省エネ化できる。3相誘導モータの利用シーンとして多い、液体をくみ上げるポンプや空気を送り込むファンのような使い方の場合、電力量は回転数の3乗に比例して増えるため、回転数で流量調整すれば、実は使用電力量を大きく落とせる。例えば、回転数を0.8倍にすると使用電力量はほぼ半分になる(図3)。

図3 インバータ制御によるモータの省エネ化
インバータで回転制御をすると、80%の回転数に落とすだけで電力量を半分に減らせる。(初出は日経エレクトロニクス2011年5月2日号)。

 まだまだ、回転数制御をしていないポンプやファンは多い。ポンプやファンは3相誘導モータのうち74%を占めることから、回転数を落とす効果は非常に大きい。モータの回転数で流量を制御するには、モータに投入する電圧の周波数を自在に変更できるインバータ制御装置が必要になるが、この出荷数と3相誘導モータの出荷数から推定すると、その装着率は15%~30%しかない。つまり、70~85%がバルブの開け閉めによる制御をしていることになる。バルブによる開け閉めでは、回転数は一定であるため、流量によってモータで消費する電力量はほとんど変わらない。

余裕設計で無駄が発生

 先ほどは分かりやすいように0.8倍という数字を出したが、実際にはもっと大幅に回転数を落として運転できる可能性が高い。設置されるモータは、設計上の最大値に基づいてモータが選ばれるからだ。例えばビルの送風を設計する場合は、全フロアに一斉に最大風量で送ることを想定してモータを選ぶ。通常の運用ではこうした状態は起こらないため、モータは常時必要以上の回転数で回っていることになる。

 他にも、モータが必要以上の出力で回されている理由がある。それは、ポンプやファンの設計時に必要な出力よりも大きなモータを選ぶケースが多いというものである。ポンプを製造・販売している荏原テクノサーブによれば「汚れなどによる将来の管路抵抗増加を考えて、必要な出力の1.5倍以上のモータを選ぶのが一般的」という。回転数を3分の2(0.67倍)にできるなら、消費電力は、30%で済むことになる。加えてモータは規格品を使うため、必要な出力の1.5倍のモータが規格品にはないケースが多く、もっと大きな出力のモータを選ばざるを得ないことも珍しくない。

 実際にどのような割合でオーバースペックのモータが設置され、それらがどのような回転数で回されているかは実地調査をしてみないと分からない。しかし、上記のような状況から推測すれば、モータを高効率なものに変える、さらにインバータ制御装置を入れて流量調整をモータの回転数で行うだけで、相当量の省エネ効果が得られることは想像に難くない。

 もちろん、即効性のある節電策としては「夏季の空調の温度を高めに設定する」、「電灯を必要最小限に抑える」といったものになってしまう。しかし、いつ解決するか分からない電力供給の安定化を待ち、それまでの間、“我慢の節電”を続けるのは、あまりにも芸がない。まずは、モータやその制御方法を改善することで、省エネ化を進めることを検討してみるのはいかがだろうか。

日経BP社の特設サイト『復興ニッポン』において2011年6月23日に掲載された記事を転載しました。