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Palo AltoにあるJobs氏の自宅
Palo AltoにあるJobs氏の自宅
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大半が撤去された後、新たに飾られた花束と、Apple社のトレードマークである齧られたリンゴ
大半が撤去された後、新たに飾られた花束と、Apple社のトレードマークである齧られたリンゴ
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死を悼んで訪れる人が後を絶たない
死を悼んで訪れる人が後を絶たない
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Jobsファンは年齢を問わない
Jobsファンは年齢を問わない
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庭に植えられたリンゴの木
庭に植えられたリンゴの木
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 米国シリコンバレーに本拠地を置く半導体メーカーが集うカンファレンス「euroasiaPRESS 1:1」に参加するため、カリフォルニア州のPalo Altoを訪れている。名門 Stanford Universityのある街だ。到着した土曜日の昼、まずは“彼”の家を訪ねることにした。10月5日(米国時間)に死去した米Apple社前CEOのSteve Jobs氏の自宅である(Tech-On!関連記事1同2)。彼が最期を迎えたとされる場所でもある。

 滞在先のホテルからタクシーで10分ほどのところに、Jobs氏の家はあった。彼が有名なスピーチを行ったStanford Universityからすぐ近く、木立に囲まれた閑静な住宅街の一角だった。

 「ここだよ」といって車を止めたタクシーの運転手に、思わず「本当?」と聞き返しそうになった。目に入ったレンガ造りの家は、それほど質素なたたずまいだったのだ。日本人の感覚からいえば大きな家には違いないが、米国ならばどこででも見られるサイズ。日本でも、軽井沢あたりならこの程度の別荘は珍しくない。これが、時価総額世界一の企業を創った大富豪(であるはずの男)の家なのか。庭を取り囲む柵に手向けられた花束に気づかなければ、そうとは気付かずに通り過ぎてしまうような、ごく普通の民家だった。

 Apple社が生み出したヒット商品の数々は、“何を盛り込むか”ということ以上に“何を捨てるか”という発想の大胆さにその秘訣があったように思う。本質的なこと(とJobs氏が判断したこと)以外はバッサリと切り捨て、できるだけシンプルな造りにすることで、本質的に重要な機能やスタイリッシュさを際立たせる。そうした考え方はどこか、彼の実生活の一側面である住まいの質素さ、それゆえの美しさに通じているような気がした。

 同氏の家を庭越しに眺めた後で玄関の方へ回ろうとしたところ、警備員とおぼしき男に呼び止められた。「ここから先はプライベートな空間だ。写真を撮ったりするのは、庭の周りにとどめてほしい」。

 15分ほどの滞在時間の間に、5組ほどが私と同じように庭の前でたたずんだり、写真を撮ったりしていた。その国籍はさまざまだった。花束の数が思いのほか少ないと感じたが、タクシーの運転手が「昨日までは山積みだった」と教えてくれた。花束があまりにも増えたためだろう、私が訪れる直前に撤去されたようだ。庭に植えられたリンゴの木がたわわに実っていたのが、主の不在と対照的で物悲しかった。