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 「節電は手段であって目的ではない。商品価値や顧客提案力が落ちては本末転倒。あくまで原価低減活動としてエネルギ削減に取り組むことが必要」---こう語るのは、工場の現場改善や経営改革などのコンサルティングを行っているジェムコ日本経営(本社東京)常任理事の経営コンサルタント櫻井文達氏。VE(Valur Engineering)の視点で多くの工場の経営改革に携わってきた櫻井氏は、急場しのぎの安易な省エネについて警鐘を鳴らす。同氏に、目指すべき省エネ活動のあり方について聞いた(本誌)。

節電は誰のため?


 原発事故を契機に、いろんなところで節電の取り組みが見られた。確かに節電の効果は出たが、本当に多くの企業にとって、今夏(2011年夏)の節電対策でよかったのだろうか。本来企業が求めるべきは、顧客の創出と価値の提供のはず。節電のために顧客に不便や危険を強いるのは本末転倒だ。

 例えば、あるメーカーは今夏、4つあった設備を電力ピーク時(13~16時)に1台だけの稼働にとどめ、加えて勤務時間も変更して夜間操業で節電目標を達成したという。しかも、震災後の需要増に対応して1割増産の体制も整えた。

ジェムコ日本経営の櫻井氏
ジェムコ日本経営の櫻井氏

 だが、中長期の視点で考えると国内需要が縮小している状況で、本当に増産体制が必要だろうか。注文がなければ、せっかく省エネと増産体制を整えても意味がない。同じ節電や省エネをするなら、事業計画も考えた上で経営に役立つ省エネを考える必要があるはずだ。今夏の節電は、企業にとって改めて省エネのあり方について考えるよいきっかけになったと思う。

省エネは省エネだけにとどまらず


 本来、原価低減活動としてのエネルギ削減には、非常に大きな効果がある。エネルギコストを下げれば、材料費や設備償却費、労務費などにも波及するからだ。例えば、管理損失の視点でエネルギコストを考えると、その延長線上には不良品による後始末コストや消耗品のムダや人件費のムダが見えてくる。省エネのために、仕事の進め方や手順を見直せば、結局は生産効率を高めることにつながる。エネルギも減って人も減れば労務費も減る。つまり、省エネは、エネルギコスト以外のコストも改善することにつながるのだ。