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 2011年10月14~17日。北海道網走市にある博物館「網走監獄」で、“ニッポン発”の二つの測位技術を用いた大規模な実証実験が繰り広げられた。

今回の実証実験が行われた網走監獄。実際に網走刑務所で使われていた監獄施設などを移築したり、再現したりして展示している。写真は通称「赤レンガ門」と呼ばれた網走刑務所の正門。1924(大正13)年の建築を1983(昭和58)年に再現した。
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 実験で活用した測位技術の一つは、日本版GPSとして期待が集まる準天頂衛星「みちびき」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2010年9月に打ち上げた測位衛星である。

 準天頂衛星は、特定地域のほぼ天頂に1日のうち数時間とどまる特徴がある。このため、高い建物や山などの障害物に衛星から送信する電波を遮られにくい。従来のGPS衛星と組み合わせることで、良好に測位できる地域を格段に広げられる可能性を秘めている。

 もう一つの測位技術は、屋内測位技術「IMES(indoor messaging system)」である。JAXAなどが開発したこの技術は、これまでほとんど手付かずだったビルや公共施設などの建物内で正確な位置を把握する手段として期待が大きい。簡易型のGPS送信機に記録した「緯度」「経度」「建物の階数」のデータをGPSと同じ周波数帯やデータ形式の信号で送信するため、既存のGPS受信端末とハードウエアを共通化できる。

シームレス測位を観光案内に活用

 今回の実証実験は、二つの測位技術を博物館の観光案内に利用するシーンを想定したものだ。北海道や北海道旅客鉄道(JR北海道)、ソフトバンクモバイルなど産官学が協力し、実験を実施した。屋内外の位置を継ぎ目なく把握する、いわゆる「シームレス測位」の技術検証が目的である。

1912(明治45)年から1984(昭和59)年まで実際に網走刑務所で使われていた獄舎「五翼放射状舎房」の内部。1985年に移築された。実験では、こうした施設内にIMES送信機を設置した。
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 具体的には、スマートフォンと専用の測位用受信端末を組み合わせて、博物館の敷地内でスタンプラリーなどを実施した。網走監獄は、東京ドーム3.5個分の広さを持つ敷地内に明治期の主要な監獄施設を設置した野外博物館である。この広大な敷地を生かして、屋外ではみちびきを、屋内ではIMESを用いてシームレス測位を実現した。

 実験には、地元の大学生や小学生などが参加し、実際に端末を手にして博物館の敷地を巡った。参加者が敷地内の主要施設に近付くと、その施設に関する詳細な解説などのコンテンツがインターネット経由でスマートフォンに配信される仕組みだ。コンテンツ配信基盤には、ソフトバンクモバイルが開発した周辺情報の配信サービス「ふらっと案内」を活用した。

 こうしたスタンプラリーなどの観光案内を実現するには、スマートフォンなどに搭載された既存のGPS測位機能だけでは不十分との見方が強い。GPSは、一般に測位誤差が10m以上あるからである。10m以上離れた場所で施設についての解説コンテンツを受信しても、内容と場所を直感的に結び付けにくい。

 ここで準天頂衛星が大きな役割を果たす。準天頂衛星はGPS測位を補正する2種類の信号を送信している。1278.75MHz帯を使う「LEX」と、従来のGPS信号と同じL1帯(1575.42MHz帯)の「L1-SAIF」である。LEXがcm単位、L1-SAIFが1m未満の測位誤差を目指している。