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図1●中国でのスマートシティの現状を語る中国社会科学院都市環境発展研究所の潘家華所長
図1●中国でのスマートシティの現状を語る中国社会科学院都市環境発展研究所の潘家華所長
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図2●アジア開発銀行(ADB)東アジア局の都市開発スペシャリストであるJingmin Huang氏は、ADBの「ADB STRATEGY 2020」を紹介
図2●アジア開発銀行(ADB)東アジア局の都市開発スペシャリストであるJingmin Huang氏は、ADBの「ADB STRATEGY 2020」を紹介
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図3●パネルディスカッションの第1部で議論するパネリスト
図3●パネルディスカッションの第1部で議論するパネリスト
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図4●ビジネスモデルなどを議論したパネルディスカッションの第2部
図4●ビジネスモデルなどを議論したパネルディスカッションの第2部
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 新たなスマートシティのあり方をテーマに、2011年10月24日~28日に開催された国際会議&展示会「Smart City Week 2011」。2日目の10月25日には「新スマートシティ宣言(Round Table):日本発!新しいスマートシティのあり方を徹底討論」と題した国際会議が開かれた。スマートシティの主役は誰であり、その主役のニーズに応えるにはどんなプロセスが重要なのかを原点から考えると同時に、日本の強みをスマートシティ関連プロジェクトでどう発揮するかがテーマである。

都市には柔軟性と適応性が求められる

 会議の午前中には、中国の政府系シンクタンクである中国社会科学院都市環境発展研究所 所長の潘家華氏と、アジア開発銀行都市開発スペシャリストのJingmin Huang氏が登壇し、中国とアジアにおけるスマートシティのニーズを紹介した(図1)。

 まず潘所長は、「中国は今、新たな都市開発、農村からの都市への人の移動、既存都市の再開発という、三つの課題を抱えている」と説明し、中国におけるスマートシティへの取り組みは、諸外国以上に大きな課題であると指摘した。

 中国では毎年1400万人が都市に移動している。これにより新たな都市開発が求められている。加えて既存の大都市では、「過去の都市計画や投資規模などが不十分だったため、QoL(生活の質)が十分に確保できなくなってきている」(潘所長)という。

 三つの課題を受けて中国では、都市開発や水環境の整備、気候変動に伴う洪水被害への対応などが進んでいる。そこでの都市インフラには柔軟性と適応性を強く求めている。ただ潘所長は、「いずれもエネルギー消費を拡大し、CO2排出量の削減を難しくしている」とも指摘する。

 そのために、水力発電や太陽光発電の利用を積極的に拡大したり、低炭素な輸送手段の導入を加速したりしている。加えて、「使用済み燃料の処理など未解決な問題はあっても、原子力を利用しなければならい」(潘所長)ともした。

「都市は富裕層だけのものではない」

 続いて登壇したアジア開発銀行(ADB)東アジア局の都市開発スペシャリストであるJingmin Huang氏は、「重要なことは、誰もが都市のメリットを享受できることだ。都市は、富裕層だけのものではない」と強調した(図2)。

 ADBは、アジアにおけるスマートシティ開発を資金・技術の両面から支援している。そのために「ADB STRATEGY 2020」と呼ぶプログラムを用意し、貧困層の削減、環境保全、包括的な成長を目指す。

 ADB ADB STRATEGY 2020の具体策になるのが、包括的な都市、グリーンな都市、競争力がある都市の三つ。包括的とは、貧富や男女の差を問わないこと、グリーンは環境負荷が低いこと、そして競争力があるとは雇用が確保でき人を引きつけることの意味だ。

 Huang氏は、ADB STRATEGY 2020の事例として中国での二つの取り組みを挙げた。南京での河川再生事業とアルタイ地区での都市開発である。前者では「水公債」と呼ぶファンドが上手く機能したこと、後者では住民の啓蒙活動を含めた取り組みが奏効していることなどを紹介した。

小学6年生がスマートシティを語る

 両氏および、野村総合研究所の中国・アジア地域担当部長である横井正紀氏による「中国の智慧城市が求める日本への期待」の紹介を受けて、午後からは、2部構成のパネルディスカッションが開かれた。

 第1部では、「見えてきたスマートシティの将来像」をテーマに、日本IBMの岡村久和氏、日建設計シビルの杉山郁夫氏、横浜市の橋本徹氏、日揮の丸山修平氏が、パネリストとして登壇した(図3)。

 ここでは、「スマートシティとは何か」という根本的な定義を求めて議論が交わされた。パネリストの間では特に、「スマートシティ=ICTによるデジタル化」などと称されていることに対し、「都市に住む市民や企業が最適な活動を続けられるため」といった目的を見失わないことの重要性などが指摘され議論された。

 議論の途中で、“サプライズ”があった。東京・中央区にある京橋築地小学校6年生の小津真志保さんによる発表だ。小津さんは自由研究でエネルギー問題に興味を持ち、そこからスマートシティとは何かについて、日立製作所や日本IBMなどへのインタビューも実行して、まとめあげたという。

 小津さんは、「これまで私たちはエネルギーなどに無関心できた。色々な技術を使って最適化を図るスマートシティでは、私たち全員が、どう暮らしていくかを考えることが大切だ」と、発表をまとめた。この発表には、パネリストも結論を先取られたほどのインパクトを受けると同時に、小津さんたちの世代が暮らす都市をイメージしての議論も進行した。

都市の評価指標の国際標準化が始動

 パネルディスカッション第2部のテーマは、「スマートシティと日本の貢献」である。パナソニックの石王治之氏、東芝の篠原哲哉氏、日立製作所の河野通長氏、三菱商事の平栗拓也氏、日産自動車の牧野英治氏、北九州市の松岡俊和氏、三井物産戦略研究所の本郷尚氏が登壇した(図4)。

 ここでは、「まるごと戦略」を採るパナソニックや、電気自動車(EV)を組み込んだ家庭像を描く日産自動車などの取り組み事例や、日立や東芝、三菱商事などが展開する海外でのスマートシティ事例などを引き合いに、ビジネスモデルを中心に議論が進行した。各氏とも明確なビジネスモデルを現時点で明確にすることは困難だとしながらも、ポイント制度など他業界などで始まっている取り組みに参考点があるのではないかと指摘した。

 また日本の強みを発揮するために標準化戦略の重要性も強調された。その一例として、スマートシティの評価指標を日本発の国際標準に打ち立てるための活動が始動していることなどが紹介された。