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図1●スマートシティの課題と成功ポイントを指摘した日建設計総合研究所の松縄堅理事長
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図2●Nakheel社でプロジェクトディレクターを努める中田光和氏は、日本のノウハウや文化が武器になると語った
図2●Nakheel社でプロジェクトディレクターを努める中田光和氏は、日本のノウハウや文化が武器になると語った
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図3●中国の住宅事情を解説する万科の趙漢昌総工程師
図3●中国の住宅事情を解説する万科の趙漢昌総工程師
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 新たなスマートシティのあり方をテーマに、2011年10月24日~28日に開催された国際会議&展示会「Smart City Week 2011」。4日目の10月27日には「未来都市計画会議、先駆者が示す新しい都市ビジョンと実現のカギ」と題した国際会議が開かれた。スマートシティをはじめとする新しい都市建設にどう挑むのか、スマートシティの構築を進めるうえでの課題は何なのか、といった実態把握と日本の参入機会がテーマである。

メーカー視点でなく需要者視点に

 スマートシティをはじめ、新しい都市開発においては、マスタープランの策定から都市を構成する施設の建設や運用までを設計・計画しなければならない。そうした役割を担っているのが、デベロッパーや建築設計事務所、建設会社である。未来都市計画会議には、英Arup社やUAE・ドバイのNakheel社など世界的なデベロッパーに加え、中国の万科、日建設計総合研究所や森ビル、清水建設のトップが集まり、現状とこれからについて意見を披露した。

 日建設計総合研究所・理事長の松縄堅氏は、「スマートシティ実現に向けて解決すべき課題」と題し、地域丸ごとの省エネを目指すスマートエネルギーのための課題と成功ポイントを指摘した(図1)。特に、「スマートエネルギーはメーカー視点になりがちだが、需要者の視点が不可欠である」(松縄氏)と強調する。

 需要者視点が重要なのは、街や地域を対象にした取り組みでは多様化するステークホルダーの合意を形成することが不可欠なことや、メーカーや供給者の取り組みだけでは十分な省エネは達成できないことといった課題があるからだ。それだけに松縄氏は、「やる気のある事業者がいなければ話は始まらない。そのため、事業性や雇用の確保など経済的にも魅力のあるプロジェクトになるよう、“あの手・この手”を考えるべきだ」と訴えた。

 需要者を巻き込み、経済性を確立するための方法の一例として、松縄氏は「環境金融」といったアイデアを提示する。スマートエネルギー・プロジェクトに対し、市民が投資するファンドの一形態である。環境金融などを利用した場合の試算によれば、「単年度黒字化に12年かかるようなプロジェクトが2年で単年度黒字化できる」(松縄氏)という。

日本の組織力と文化が世界で戦う武器になる

 オイルマネーを背景に貿易立国や観光立国を進めるアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。その海岸部の開発を担うNakheel社でプロジェクトディレクターを努める中田光和氏が、ドバイの現状と、日本の建設業界の海外事業進出の成功条件などを解説した(図2)。

 中田氏はまず、ドバイの現状を紹介した。2008年のバブル崩壊により大型案件が中断していたが、2010年以降はホテルの稼働率が80~90%を常に超えるなど、観光客も戻り不動産市場もバブル以前の状況に戻りつつあるという。その理由について中田氏は、「大きな港・空港を作れば人が集まり新たなビジネスが着いてくる。世界でナンバーワンのプロジェクトを手がければ新しいビジネスが着いてくるという、30年先を見越したドバイ市の戦略が奏効している」とした。

 ただ中田氏によれば、「欧米コンサルなどによるプロジェクトが予定通りの予算・工期で完成することはない」。それだけに、「日本には組織としての経験・ノウハウと『約束は守る』という文化がある。これらを組み合わせれば海外でも勝てる」とエールを送った。

 海外プロジェクトで日本企業が自らの力を発揮するための条件として中田氏は、「欧米のコンサルタントや現地コンストラクターらをまとめられるプロジェクトマネジャーが成功のカギになる。長期的な視点から、小型案件から始め失敗から経験・ノウハウを習得していく必要がある。コンストラクション・マネジメントのみ受注するのも良い方法の一つだろう」とした。プロマネの条件としては、「あきらめない体力と気力、語学力、現地適応力といったソフト的な能力」(同)を挙げた。  

北京、上海など既存都市の再生も必要

 また中国で住宅事業を展開する万科の総工程師である趙漢昌氏は、中国・農村部における都市化の状況や、それに伴う住宅不足および急速な住宅価格の値上がり状況を説明すると同時に、「都市開発ニーズは農村部だけでなく、北京や上海とした既存の大都市圏でも強まっている」ことを明らかにした(図3)。

 既存の大都市圏で都市開発ニーズが強い理由として趙氏は、開発計画時に、建物の品質が低かったことや、投資額が不十分だった、環境対応の重要性の高まりなどを挙げる。品質・投資の不足から、住環境が悪化したり、さらには倒壊してしまったりするようなケースもみられるという。

 これらの課題解決に向けて万科は、日本の建設・施工技術などを積極的に取り入れることで建築物の品質を一気に高めたい考えを示した。

 このほか、森ビルの取締役 副社長執行役員である山本和彦氏は、自家発電設備を持ち事業継続性を高めた六本木ヒルズや、生物多様性に配慮した「虎ノ門・六本木地区再開発」などを例示しながら、「逃げ出す街から逃げ込める街へ」という森ビルのコンセプトを解説した。

 清水建設で技術を担当する専務執行役員の東條洋氏は、非常時の事業継続機能(BCP)と平常時の節電対策(ECO)の双方を備えるスマートコミュニティを提案した。その具体例として、BCPとECOのキー技術となるマイクログリッドや、自社ビルへの導入結果などを挙げた。