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統合新会社の代表取締役社長に就任する大塚周一氏。日本テキサス・インスツルメンツやソニーを経て2002年にエルピーダメモリに入社。同社COOを経て、2011年に同社取締役を退任。
統合新会社の代表取締役社長に就任する大塚周一氏。日本テキサス・インスツルメンツやソニーを経て2002年にエルピーダメモリに入社。同社COOを経て、2011年に同社取締役を退任。
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 産業革新機構とソニー、東芝、日立製作所は2011年11月15日、中小型ディスプレイ事業の統合について正式契約を締結した(Tech-On!関連記事)。産業革新機構は同日記者会見を開催し、4社が出資する新会社「ジャパンディスプレイ」の代表取締役社長に就任する大塚周一氏が登壇した。報道陣と交わされた主な質疑応答の内容は以下の通りである。

――パナソニック液晶ディスプレイの茂原工場を買い取ることを発表した。買収金額や新設する製造ラインの生産品目、立ち上げ時期について聞きたい。また、3社が保有するラインがあるにも関わらず、なぜ工場を新たに買収するという選択肢に至ったのか。

大塚氏 買収金額などの詳細は、2011年12月末をメドとする正式契約に向けて詰めていく。茂原工場には現在、アモルファスSi TFTベースの液晶パネルを生産する第6世代の製造ラインがある。ここを低温多結晶Si TFTの中小型パネルに転換し、スマートフォン向けの生産能力として活用する。スマートフォン向けの中小型パネル市場は今後年率21%で伸びる見通しの、成長が約束された市場である。市場や顧客の動向を見極めながら、適切な時期に新ラインを立ち上げる。新会社では受け身でビジネスを取れるとは考えておらず、顧客を獲りにいく姿勢が欠かせない。私自身もこれから顧客を積極的に訪問するつもりであり、そうした感触から新ラインの立ち上げの時期を判断していく。

 茂原工場を買うことに決めた大きな理由は、製造インフラが既に整備されていること。投資の経済効率や立ち上げスピードの点で、新しいラインを自ら設けるよりもメリットが大きいと判断した。さらに、十分な生産能力とコスト競争力が中小型パネル市場で勝つための必須条件であることを考えたとき、第6世代に対応する製造ラインを使うことがベストな選択だと考えた。

――中小型パネルでは海外勢の追い上げが激しい。何を強みとして競争に打ち勝っていくのか。

大塚氏 中小型パネルはアプリケーションが多様であり、カスタム色が非常に強いデバイスだ。精細度、消費電力、視野角などの要求が顧客によってかなり大きく異なる。東芝、ソニー、日立の3社はこれまで、こうした顧客の“懐に飛び込んでいく”ことで顧客の要求に応えてきた。こうした強みを、新会社でも発揮できるだろう。加えて、スマートフォン向けパネルでは、今後も高精細化や低電力化が進むことが確実であり、ここにはさまざまなソリューションがあり得る。タッチ・パネルの機能を取り込むことも重要になってくるだろう。こうした領域において、我々は技術をリードする立場を築いていける。今後求められる生産規模や供給能力、コスト競争力などからみて、我々が勝つチャンスは大いにある。

――新会社では有機ELパネルにはどう取り組むのか。

大塚氏 現時点で、有機ELパネル市場の成長性を見極めるのは、時期尚早だと思う。現在の有機ELパネルと低温多結晶Si TFTベースの液晶パネルを比べると、精細度や消費電力、輝度などの点で有機ELパネルにはまだ乗り越えるべき壁がある。有機ELパネルが現在の課題を解決するころには、液晶パネルはさらに先を行っているだろう。ただし、東芝と日立はそれぞれ有機ELパネルの開発を手掛けてきた経験があり、新会社ではソニーから有機ELパネル関連特許をライセンスしてもらい、中小型パネルの開発や量産に生かすこともできる。

 こうした過去の蓄積を机上に置いて、新会社でどのようなアプリケーションに向けて有機ELパネルを開発すべきかを精査したい。既存のビジネスを追うのか、あるいは次世代を見据えてそこへの開発に注力するのか、といった点を判断しなければならない。もし、既存のビジネスを現行の有機ELパネル技術で追いかけるのならば、2013年ごろに有機ELパネルを事業化することは、それほどハードルが高いとは思っていない。しかし、それが有機ELパネルに対する我々の最適なソリューションかどうかを適切に判断することが大切だ。

――新会社の設立や運営における課題はどこにあると考えているか。

大塚氏 当面の課題は、2012年春に新会社がスムーズに始動できるように、3社との協議を進めていくことだ。従来の事業統合では、統合にかかわる事業者が新組織の運営主体となるパターンが多かった。産業革新機構が新会社の運営主体を担う今回のスキームは、これとは異なる。我々が自ら動かなければいけない。新会社設立までに残された時間は少ないが、生産プロセス技術などさまざまな点で3社のシナジーを追求していく。

 私自身、米Texas Instruments社やエルピーダメモリに在籍した経験から、グローバル・リーディング・カンパニーになるために乗り越えなければならない壁は承知しているつもりだ。こうした点を3社にも話しているが、皆が私の思いに同意してくれている。新会社でどのようにリーダーシップを発揮し、大胆な意思決定を下していくかが、私に課せられた使命だと考えている。