PR
[画像のクリックで拡大表示]

 2010年には生産量、販売量ともに世界一になった中国の自動車市場。その巨大市場の中でも今後伸びが期待されるのが電気自動車(EV)だ。従来のガソリン車は,基幹技術を日米欧のメーカーに依存せざるを得ない状況だが,電気自動車に関しては自国での産業発展に国を挙げて取り組んでいる。そのような中国において,電気自動車の国際モデル都市に初めて上海市が認定され,中でも嘉定区がモデル区として指定された。嘉定区において,電気自動車発展のための政策をリードする,嘉定区上海国際汽車城管理委員会ならびに上海国際汽車城(集団)で新能源汽車事業部副経理を勤める丁暁華氏に現在の取り組みや今後の方針について聞いた。(聞き手は木村知史=Tech-On!編集)

――嘉定区のプロフィールについて教えてください。

 2011年4月22日に,上海市で電気自動車に関するフォーラムが開催されましたが,その時に国家科学技術部と上海市は,上海市を中国では初の電気自動車国際モデル都市に,そして嘉定区をモデル区として認定しました。嘉定区はそれまでも自動車産業に特化して産業を成長させてきましたが,それが認められた結果だと思っています。

 嘉定区では,2001年からおおよそ670億元の投資をして,自動車の産業チェーンの発展に貢献してきました。100km2の敷地に,自動車の製造だけでなく,開発や設計,物流などあらゆるプロセスの発展に貢献してきました。

 進出企業で最も大きい規模を誇っているのがドイツVolkswagen社です。同社は昨年中国内で100万台のクルマを販売しましたが,嘉定区だけでも完成車の生産能力は年間で100万台あると聞いています。また,イタリアFiat社,上海汽車、奇瑞汽車などはR&Dセンターをすでに構築済みです。奇瑞汽車に関しては,電気自動車の生産は嘉定区を予定していますし,また重慶に本拠地を置く重慶力帆汽車も嘉定区での電気自動車生産を予定しています。

 もちろん,進出しているのは完成車メーカーだけではありません。知名度の高い部品メーカーも多数進出しています。米Delphi社や米A123 Systems,独FAG社などで,日本メーカーとしては小糸製作所が生産拠点を構えています。

――嘉定区は開発区としてどのような成長戦略を持っていますか

 前述したように、嘉定区では自動車の産業チェーンを発展させてきました。ただ、どちらかというと生産基地という意味合いが大きく、多くの会社の生産工場が並んでいます。これからは、ここから少しレベルアップして、多くの企業のR&Dセンターを誘致したいと考えています。このため、研究開発地域という一角を現在用意しており、一つの会社で300m2~3000m2の土地を提供できる用意があります。

 また、電気自動車専用の検査センターを建設しようという計画があります。政府から正式に建設の許可が下りましたので、現在は実際の設計に入っている段階です。特にEMCの検査には投資をして、最先端の設備を入れる予定にしています。

――中国では初の電気自動車国際モデル区として認定されたわけですが、モデル区してどのような活動を考えているのですか

 我々は活動の基本として、「一つの基地、二つのクラブ、三つのプラットフォーム、四つのセンター」という方新を掲げております。

 一つの基地というのは、この嘉定区というのを一つの基地として活動しようということです。二つのクラブというのは、自動車を生産する企業を一つのクラブとして運営するとともに、電気自動車のユーザークラブも作って、それを両輪として活動しようという意味です。二つのクラブは共同で、「電気自動車の基本パートナー組織」を結成しました。

 次の三つのプラットフォームですが、これは活動の基盤としてサミット、展示会、そしてコンテストの三つを据えようという意味です。最後の四つのセンターですが、これは具体的に電気自動車の開発を推進する場として、ビジネスモデルのイノベーションセンター、模範都市センター、試乗試運転センター、データ評価センターを提供しようというものです。

 四つのセンターでは、それぞれが重要な役割を担います。

 2011年4月から試験運営した「中国(上海)電気自動車国際模範都市試乗及び試運転センター」は5月15日に正式に運営を始めました。同センターではEV車の試乗と試運転サービスを提供するとともに、国内・海外のEV車メーカーに対して技術展示と運営研究の役目を持ってます。また、模範都市建設の成果をPRする1つの重要なプラットフォームにもなっています。試乗及び試運転センターはこれまで約1万3000人の訪問者に対応しており、試乗及び試運転を経験した人数は5500人を超えました。

 EV車運営サービスセンターは国内と海外のEV車のユーザーに運営とサービスを提供し、最近ではEV車の修理保障基地を建設中です。全国で始めて奇瑞汽車,BYD社,衆泰汽車等のいろんなブラントのEV車を販売する会社、上海高瞻新エネルギ車販売服務有限公司が設立し、運営を開始しました。

 上海国際自動車城(集団)有限公司は同済大学、中国自動車工程学会と共同で「模範評価センター」を設立。国家の863課題と上海市科学委員会の重大課題に対応し、評価分析とデーターシェアのプラットフォームの建設を展開しています。最初は町の中で走った8台の個人用EV車に対してデータを収集しました。また、同済大学、上海電力公司、宝信ソフトと一緒に、模範運営監視制御プラットフォームの構築も推進しています。

 また、上海国際自動車城(集団)は同済大学と聨合で「ビジネスモデルイノベーションセンター」を設立しています。EV車の運営時のビジネスモデルイノベーションの研究を担当しています。

 個人が車を購入するときの模範推進方案を作成しています。国内の新エネルギー車の完成車メーカーを訪問、比較、選択し、奇瑞汽車、中科深江、杭州衆泰、BYDが第一回の完成車調達メーカーにすることを確定しました。また、個人の方に10台のPEV車を購入してもらい、4月6日に全国で始めて個人が購入したEV車にナンバープレートを付け、町の中で走るということを推進しました。実際的に新エネルギー車の模範運用を展開し始めました。

――電気自動車の普及にはインフラの充実が不可欠だと思いますが、どのような計画を持っていますか。

 インフラとしては、四つの計画を持っています。一つ目は、モデル区周辺に770カ所の充電スポット、4カ所の充電・電池交換スタンドを造ること。二つ目は、1カ所のガソリンスタンドを改善し、エンジン車、電気自動車の双方に対応できるようにすること。この二つは2011年内の実施を目標にしています。

 三つ目は、15台の電気自動車バスを区内バスとして利用すること、四つ目は100台の電気自動車バスと6台の燃料電池車を主には官公車として利用すること。この二つは2年以内の実施を目指しています。

――消費者に普及するための施策にはどのようなものがあるのでしょうか?

 政府は消費者の補助金として電気自動車のユーザーに最高で6万元を支給することを発表しています。さらに上海市ではこれに加えて最高で4万間を上乗せして支給します。これらの施策により、当初はモデル区周辺で2011年内に1000台、3年以内に1万台の電気自動車を、個人に対して販売することを目標に設定しました。

 ただし、この計画は若干遅れています。最初の電気自動車のユーザーは8人で、彼らは4月6日に購入しています。この数はほとんど伸びていません。というのも、補助金を支給される詳細な条件がまだ発表されていないからです。このため、2011年内の電気自動車の販売は100台程度にとどまりそうですが、条件さえ発表されれば、普及に拍車が掛かると思っています。

――特に中国進出を考えているメーカーに、嘉定区に拠点を構えることのメリットを教えてください。

 繰り返しになりますが、嘉定区は電気自動車国際モデル区として認定され、このため電気自動車に関する設備を充実させようとしています。例えば、データ評価センターで収集されたデータは共有ですので、これまで試乗試運転した800人の顧客の体験データが分かります。購買意欲やサービスに対する要望が分かるわけです。もし、完成車メーカーであれば、自社の電気自動車を提供することで、顧客の生の声が聞けます。このようなデータは、今後の開発方針を決定するうえで、重要なものとなるはずです。

 また、まだ数は少ないですが、実際に電気自動車を購入した人々の行動なども分析できます。販売したすべての電気自動車にはGPSが導入いるので、どの程度の速度で運転しているのか、いつごろ充電するのか、充電時にはどれぐらいの残量が残っているのかなどのデータをすべて持っています。これらのデータも開発に活用できます。

 このようなメリットがありますので、日米欧の自動車関連メーカーには是非進出してほしいと考えています。特に日本のバッテリ技術は最先端のものを持っていますので、中国のローカルメーカーと共同で、中国市場にマッチした製品を作ってほしいと考えています。