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Nokia Siemens NetworksのDr. Harri Holma氏
Nokia Siemens NetworksのDr. Harri Holma氏
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独フィンランド合弁のNokia Siemens Networks社では「モバイル通信のトラフィック量は2020年には2010年比で1000倍になる」と予測している。第4世代の移動通信技術(4G)である「LTE Advanced」を採用しても、周波数利用効率は5倍程度にしかならない。どのようにこの問題を解決するのか。同社の研究所特別研究員のDr. Harri Holma氏に技術的な解決策を聞いた。

モバイル通信のトラフィック量が2020年に2010年の1000倍に達すると予測しているが、どのように対応するのか。

 三つの要素を組み合わせる。周波数利用効率の向上、モバイル通信に使う周波数帯の拡大、基地局数の増大だ。それぞれを10倍にすれば、1000倍になる。

周波数利用効率は、どのように増やすのか。

 まず、現在のHSPAに比べて、LTEで2倍~3倍、LTE Advancedで5倍程度になる。さらにその先は、基地局アンテナから遠い位置にあり、隣接するアンテナからの干渉を受けやすい場所であるセル境界の周波数利用効率を上げることで対処する。基地局アンテナに近い場所にいる移動機は電波条件が良いため、高いビットレートでデータ送受信できるが、遠い場所は低くなってしまう。隣接する基地局アンテナから、同じ移動機に向かって信号を送ればセル境界の端末の電波条件を向上し、ビットレートを向上できる。加えて、LSIの高集積化によって移動機側で高度な干渉キャンセルができるようになれば、周波数利用効率は10倍まで高められると見ている。

LTEでは変調方式をCDMAからOFDMに変更することで周波数利用効率を伸ばした。OFDMとは異なる変調方式を使うという方法は無いのか。

 第2世代のTDMAから第3世代のCDMA、そして第4世代でのOFDMという流れは技術のトレンドは予見できるものだった。しかし、OFDMの次となると、現時点で有望な技術はない。OFDM技術を改良し、先に述べたようにセル境界の電波条件を良くするといった手段を使って、周波数利用効率を上げるしかない。

第2の要素である周波数帯の拡大はどうか。

 こちらも解決できる可能性がある。世界中で周波数の再編が行われており、700M~900MHz、2.3GHz、2.6GHz、3.7GHzなど、さまざまな周波数帯が移動通信に利用できるようになるからだ。これらを合わせれば、理想的には10倍以上になる。

TVホワイトスペースのような周波数の共用についてはどうか。

 他のシステムと周波数を共用することについては、あまり携帯電話事業者は前向きではない。その周波数では、運用で制限を受けるからだ。移動通信にライセンス・バンドとして与えられる周波数帯が供給される状況のうちは、わざわざ他のシステムで利用している周波数帯を使おうとは思わないだろう。ただし、将来移動通信向けに割り当てる周波数がなくなった場合には、そうした手段を考え始めることになるだろう。

最後の要素である基地局数の増大についてはどうか。

 大きなセル、小さなセルなど多数のセルを用意して、アンテナの数を増やしていく方法を採る。従来、携帯電話事業者はセルの設計を行い、それに従ってアンテナを設置してきたが、もはやこの手法には限界がある。電柱やビルの上、看板の中など、アンテナが置ける場所があれば、とにかくそこに設置する必要がある。

 これのビジョンを実現するには二つの技術が必要だ。基地局の小型化と、アンテナのパラメータ設定の自動化である。前者については、ベースバンド処理を行う装置をセンタ側に設置し、アンテナとこの装置の間を光ファイバで結ぶ、いわゆるRoF(Radio on Fiber)を使うことで実現できる。アンテナ設置場所にはアンテナ以外の大型の基地局装置は必要なくなるので、設置場所の選択肢が増えるわけだ。センタ側にベースバンド処理を集中させることで、余剰なリソースを持たなくて済むというメリットもある。

 後者のパラメータ設定はSON(Self Organizing Network)と呼ばれるものだ。周囲のアンテナの信号などから、各アンテナ信号レベルなどが最適な状態になるように自動的に設定する。SONは基地局システムの消費電力量の削減や、災害復旧にも利用できる。消費電力量の削減では稼動させる基地局数を変更して対処するというアイデアもある。例えば、トラフィック量が小さい深夜は稼働を減らし、トラフィック量が大きい昼間は稼働数を増やす。基地局の数を減らした状態の時には、セル・サイズを大きくするわけだ。同様に災害時には、動作する基地局だけでネットワークを維持するといったことが可能になる。