宮城県気仙沼市の仮設住宅に3台のトレーラーハウスが設置され、そのオープニング・イベントが2012年1月28日に開かれた。これは気仙沼スマートライフケアコンソーシアムが、「気仙沼絆プロジェクト」の一環として行った事業。今後2年間の予定で、おもに被災した高齢者の人たちの健康管理や生活支援などを研究する拠点として利用されるほか、仮設住宅に暮らす人たちの憩いの場としても活用される予定。
コンソーシアムは産業技術総合研究所を中心に、トレーラーハウス・メーカーのカンバーランド・ジャパンやNPO法人の河口湖自然楽校、ホンダ、帝人、アクセンチュアなどの企業が名を連ねる。すでに関わりを持っているが、まだ正式に名乗りを上げていない商社や自動車メーカーもある。
トレーラーハウスの内の1台には、最新の人型ロボットやペット型ロボット、洗髪ロボットなどが展示され、ホンダの歩行補助ロボットの体験会も行われた。それだけ見ると、少し場違いな移動展示会のようだが、それは一面にすぎない。コンソーシアムの中心メンバーである産総研の小島一浩主任研究員らは震災後いち早く被災地に入り、被災者のメンタル面のケアを中心に復興支援がどうあるべきかを地道に調査し続けてきた。さらにこれから、このトレーラーハウスに2年間常駐し、被災者の人たちと同じ生活を体験する。その間、ロボットやネットワークなどの最新技術がどう貢献できるかについても調査するのだが、あくまでも被災者の人たちの生活支援はどうあるべきかを探るのが目的である。
トレーラーハウスを提供したのは、タレントの清水国明氏が運営するNPO河口湖自然楽校。「この17年間で、私たちの災害に対応する能力は何一つ進歩していなかった」と語る
清水氏は、阪神・淡路大震災の体験を元に、トレーラーハウスが被災地支援の有力なツールになると確信し、その普及に努めている。イベント前日のシンポジウムで、アクセンチュアの石塚智久氏は、米国でカトリーナ台風の時に大量のトレーラーハウスが調達された例を紹介し、迅速な救援には有効だが、平時の維持管理費が大きな問題になっていることを指摘した。清水氏はこれを受けて、平時にはレジャー施設として1台のトレーラーハウスを複数のユーザーで共有し、災害時には被災地域のユーザーが長期間占有できる仕組みが作れないか研究している、と述べていた。
そのほか、ホンダはLPガスのコージェネ装置を、帝人は小型の下水浄化システムなどを提供した。トレーラーハウスには、企業名は未公表だが太陽電池パネルも取り付けられていた。将来は、電気自動車によるV2Hやスマートグリッドの研究に使う構想もあるようだ。それぞれのメンバーのプロジェクトへの関わり方や目指すものは違っていても、一日も早い復興を望む気持ちは同じであろう。