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アプリックスのM2Mモジュールを組み込んだコーヒー・メーカー。その奥に、モジュールを展示している。2012年6月中旬に開催された「Interop Tokyo 2012」で展示したもの。これらの展示物は、Best of Show Awardの特別賞を受賞したという。
アプリックスのM2Mモジュールを組み込んだコーヒー・メーカー。その奥に、モジュールを展示している。2012年6月中旬に開催された「Interop Tokyo 2012」で展示したもの。これらの展示物は、Best of Show Awardの特別賞を受賞したという。
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スマートフォンでコーヒー・メーカーを制御できる
スマートフォンでコーヒー・メーカーを制御できる
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ガイアホールディングス 代表取締役の郡山龍氏
ガイアホールディングス 代表取締役の郡山龍氏
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 携帯電話用ソフトウエア開発を手掛けるアプリックスが、今、M2M(Machine to Machine)事業に全速力で取り組んでいる。コーヒー・メーカーや炊飯器、体温計などあらゆる機器をネットワーク接続するための小型無線デバイスやソフトウエアを提供し、クラウド・コンピューティングを積極活用して処理を実行する。そのためのアダプタや組み込み用無線モジュールを提供していく考えだ。同社の親会社であるガイアホールディングス 代表取締役の郡山龍氏に、M2M事業に注力する理由を聞いた。



――「M2M」というキーワード自体は昔からあった。なぜ今、M2Mに注力しているのか。

郡山氏  確かに、M2Mというコンセプトは、決して目新しいものではない。我々も以前から、海外の移動通信事業者に、M2Mのソリューションを提供していた。

 ただし、これまでのM2Mは、大掛かりな機械をつなぎあう用途が中心であり、接続に使う通信機器も、“それなりの機械”であることが必要だった。このため、自動販売機など、比較的大きなシステムでの利用にとどまっていた。使い方も、あくまでポイント・ツー・ポイントが主軸であり、それ以外の用途やアプリケーションまでは想定されていないものが多かった。通信プロトコルも専用のものが多く、閉鎖的なシステムが中心だった。

 しかし、やっと時代が進んできて、「手段としてのM2M」を活用できる場が増えてきた。だんだんとM2Mに使う部品が使いやすくなり、例えば体重計などの機器をつなげられるなど、できることが広がっている。そういう意味では、ここ数年、M2Mの応用可能性が拡大していることに、多くの人が気付き始めていたと思う。

 ただ、そこに一つ課題があった。通信機能を組み込むと、途端に値段が上がってしまうことである。例えば体重計でもネット接続対応の機種になると、価格が一桁上がってしまう。これが、普及の障壁になっていた。そこで我々は2年ほど前から、通信機能を実現する部分のコスト低減に注力し始めた。

 どうすれば安くつなげられるか、いろいろソリューションを考えてみた。まず考えたのは、クラウド・コンピューティングを多用することで、端末側の処理はなるべく軽負荷にすることである。家電機器などに通信機能を組み込もうとすると、CPUコアにARM9系のコアを利用するなど、いたずらにハイスペックになりがちだ。しかし、1日に1回程度データを送出するような家電機器に、わざわざARM9系のようなCPUコアを組み入れるのはもったいない。であれば、できるだけコンピューティングの部分はクラウドにやらせて、機器側には最小限の回路を組み入れればいいという構成を目指すことにした。

 とはいえ我々はソフトウエア開発企業なので、半導体を誰かに作ってもらわなければならない。そこで2年ほど前からいくつかの半導体メーカーを回り、「M2Mのため、こういう半導体をつくってくれないか」と相談して回った。すると、ある海外メーカーが「これは面白い。ウチで作ってもいい。しかし一つだけ条件がある。外販させてほしい」と言ってきた。当時、その半導体メーカーは、CPUコアから内部の回路ブロックまでほどんどIPとして他社から寄せ集めて企画をしており、一種の「半導体企画マーケティング会社」のような存在になっていた。このため我々のような会社のアイデアを取り込み、それを半導体の付加価値にすることに積極的だった。

 こうした半導体メーカーと議論する中で、我々は逆に「IPを寄せ集めたりアイデアを基に企画するだけであれば、我々が自社でも半導体を設計できるのではないか」という話になった。当時、リーマンショック後の不況下にあり、日本の半導体メーカーが優秀な人材をたくさん手放していた。このため我々が、半導体開発を手掛けていた技術者を比較的容易に採用することができた。そこで、ソフトウエア開発会社という殻を破り、自ら半導体設計に乗り出すことにしたのである。

 この結果、半導体レベルから低コストを見据えたものが実現できるようになり、M2Mの普及の大きな課題である組み込み機器側のコスト上昇を抑えるメドが立ってきた。我々の組み込み用無線モジュールは、原価で100円程度で実現できそうだ。こうなれば、数千円クラスの家電機器にも適用することができるだろう。



――M2Mの利用が広がると、どのような点が変わってくるのだろうか?

郡山氏 すべての機器がネットにつながると、まったく違う世の中になるだろう。ここで大事なのは、「一部の機器」ではなく、「すべての機器」ということだ。一部の機器がつながるだけであれば、これまでとそれほど状況に変化は無い。しかし、もっと多くのほとんどの機器がつながってくると、そこにはこれまで想像していなかったような世界が生まれるだろう。