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 パナソニックは、モバイル機器への搭載を想定して、60GHz帯を使うWiGig(Wireless Gigabit)チップセットの開発を進めている。ミリ波通信への思いや、米Agilent Technologies, Inc.のEDAツールを使って設計した送受信ICの回路などについて、パナソニックのエンジニアが講演した。

図1●モバイル機器におけるミリ波通信の優位性
右端は斉藤 典昭氏。Tech-On!が撮影。スクリーンはパナソニックのスライド。
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図2●3月に発表した第2世代品
パナソニックのスライド。
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図3●システム・レベル設計EDAの適用例
パナソニックのスライド。
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 この講演は、「アジレント・メジャーメント・フォーラム 2012(AMF 2012)」(2012年6月19日と20日にパシフィコ横浜で開催)で行われた。登壇したのは、パナソニックの斉藤 典昭氏(東京R&Dセンター 通信コアデバイス開発センター 無線デバイス開発グループ 開発第一チーム 主任技師)である。同氏によれば、高速無線通信にミリ波を使おうという動きは過去に何度かあったが、その度に代替技術(UWB(Ultra Wide Band)やMIMO(Multiple Input Multiple Output)など)が登場して、ミリ波通信は表舞台には登場しなかった。

30分程度のハイビジョン映像を10秒以下で送る

 しかし、今度こそ、60GHz帯のミリ波通信がブレイクすると同氏は言う。1ビット当たりの消費エネルギーがpJレベルで、既存の無線通信技術に比べて1/10と小さく、これが生きるアプリケーションがあるからだ。具体的には、モバイル機器でHDコンテンツを扱うようになり、それを据え置き型機器や他のモバイル機器との間でやりとりする(図1)。ミリ波通信ならば既存の無線LANの20倍の速度を提供できる。例えば、30分程度のハイビジョン映像を10秒以下で送ることが可能だという。

 同氏は、こうしたミリ波通信時代の到来を想定して、60GHz帯通信用のチップセットの開発を進めている。2011年6月には、第1世代品を開発したことを発表した(Tech-On!関連記事)。2012年3月には、第2世代品を発表し(当時のニュース・リリース)、「IEEE VTC(Vehicular Technology Conference Vehicular Technology Conference )2012-Spring」(2012年5月に横浜で開催)でデモンストレーションを行った。第2世代の送受信ICは、第1世代のそれに比べてチップ面積を半減させた(図2)。

 なお、パナソニックでは、60GHz帯通信の規格としては「業界標準」(同氏)のWiGig(Wireless Gigabit)を選び、送受信ICのアーキテクチャとしてはダイレクト・コンバージョンを採用した。「ダイレクト・コンバージョンは低消費電力化のために選んだ。歪は大きくなるが、それをデジタル・アシスト技術で補正することにした」(同氏)。

システム・レベルと詳細設計共にAgilentのEDA

 続いて同氏の話は、第2世代のICの設計に移った。AgilentのEDAツールを使って、第1世代品よりも各種スペックが向上したという話である。例えば、システム・レベルの設計には、システム・レベル・シミュレータ「ADS Ptolemy」と波形生成/解析ソフトウェアの「81199A Wireless Waveform Center」を使った。これでミリ波通信で重要な帯域内偏差耐性の検討などを行った。ヘッダ情報を使って補正された後のEVM(Error Vector Magnitude)が見られることが、Ptolemy+81199Aの重要な特徴だとした(図3)。