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図1● 携帯電話基地局の構成と送信電力増幅器 富士通研究所のデータ。
図1● 携帯電話基地局の構成と送信電力増幅器 富士通研究所のデータ。
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図2●アウト・フェージング方式の原理 富士通研究所のデータ。
図2●アウト・フェージング方式の原理 富士通研究所のデータ。
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図3●今回開発したアウト・フェージング方式送信電力増幅器の構成 富士通研究所のデータ。
図3●今回開発したアウト・フェージング方式送信電力増幅器の構成 富士通研究所のデータ。
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図4● 従来方式との電力効率の比較 富士通研究所のデータ。
図4● 従来方式との電力効率の比較 富士通研究所のデータ。
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 富士通研究所は、携帯電話基地局などの高周波用無線装置に使われる送信電力増幅器の電力効率(出力電力と全消費電力の比率)を高める回路技術を開発した(ニュース・リリース)。開発した技術を使ってピーク出力が100Wの送信増幅器を試作したところ、送信時の平均電力効率を従来の50パーセントから70パーセントに向上させられた。

 同社によれば、携帯電話基地局などの高周波用無線装置の中では、送信電力増幅器の消費電力が最も大きく、その電力効率の改善が求められていた(図1)。一般に同増幅器では出力振幅に応じて電力効率が変動する。広い出力範囲で高い電力効率を実現することは困難だった。例えば、現在の携帯電話基地局で用いられている送信電力増幅器では、送信信号全体に占める電力効率が高い出力範囲の割合は約65%にとどまっているという。

 広い出力範囲で電力効率を高める技術としては、アウト・フェージング方式が知られている。この方式では、まず送信信号を振幅が一定で位相が異なる2つの信号に分離する。各信号を増幅素子の電力変換効率が高い動作範囲で増幅し、その後、合成回路でベクトル合成して再生する(図2)。しかし、合成回路の損失や信号再生の際の位相差に対する要求精度の面から、これまでアウト・フェージング方式は、高周波無線通信用途には適用されていなかったという。

 今回、アウト・フェージング方式の課題を克服する技術を2つ開発して、同方式の高周波無線通信での実用化にメドを付けた(図3)。1つは、低損失での合成が可能な回路の開発である。具体的には、アウト・フェージング方式の送信電力増幅器において、2つの増幅素子が同時に動作している場合の出力負荷インピーダンスと電力効率の関係を正確に解析することによって、従来に比べて合成回路の線路長を短縮した。線路が短くなることで、合成回路の損失が低減され、かつ広帯域化が図れた。

 もう1つは、デジタル信号処理による高精度な位相誤差補正技術を開発したことである。具体的には、アウト・フェージング方式の送信電力増幅器において、入力側の信号分離をデジタル信号処理で行い、また合成回路の出力誤差を検出しデジタル信号処理部へフィードバックすることで、高い精度で位相差を補正して信号を正確に再生できるようにした。

 今回、上述の2つの技術を適用したアウト・フェージング方式の送信電力増幅器を開発すれば、送信時に高い電力効率となる割合を従来の約65%程度から約95%に上げられることが分かった(図4)。また、ピーク出力電力が100Wの送信増幅器を試作したところ、送信時の平均電力効率を従来の50%から70%に向上させることができた。

 今後、富士通研究所では、今回の技術を適用できる周波数や出力などの範囲を広げ、実際の無線システムに適用できるように性能を向上させていく。携帯電話基地局などの無線装置の要求条件に合うように開発を進め、2015年の製品適用を目指す。なお、今回の技術の詳細は、2013年10月24日に東北大学で開催される、電子情報通信学会マイクロ波研究会で発表される予定である。