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図1●ミリ波送受信ICの構成 左が化合物半導体を用いる場合で、右がSi半導体を用いる場合。右は集積化が容易。富士通らのデータ。
図1●ミリ波送受信ICの構成 左が化合物半導体を用いる場合で、右がSi半導体を用いる場合。右は集積化が容易。富士通らのデータ。
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図2●従来の信号生成回路とタイミング・チャート 富士通らのデータ。
図2●従来の信号生成回路とタイミング・チャート 富士通らのデータ。
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図3●今回開発した回路とタイミング・チャート 富士通らのデータ。
図3●今回開発した回路とタイミング・チャート 富士通らのデータ。
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 富士通と富士通研究所は、Si半導体を用いたミリ波送受信機への適用を狙い、低雑音な信号生成回路を開発した(ニュース・リリース)。今回の回路の開発によって、車載レーダーなどのミリ波無線通信端末を、Si半導体を使って実用化するメドを付けたという。

 これまで、ミリ波信号を送受信するための高周波ICには、化合物半導体が用いられてきた(図1)。Si半導体を使うことで、信号処理回路などとの一体化や高機能化、量産化が進むと期待されているものの、Si半導体は雑音が大きく、実用化が遅れていた。

 ミリ波送受信用ICは、ミリ波信号を生成するための信号生成回路を集積する。従来、このミリ波信号生成回路は、ミリ波発振器信号を分周した低周波の比較信号と、基準発振器からの低雑音・高安定な基準信号とを比較し同期させることで、低雑音・高安定なミリ波信号を生成していた(図2)。この回路では、基準信号と比較信号を同じ周波数にして基準信号の1周期あたり1回の比較を行っている。

 このため、位相差検出回路が発生する雑音に対して、比較結果の差信号を相対的に大きくすることができず、雑音が大きくなる問題があった。特に、Si半導体は化合物半導体に比べてトランジスタが発生する雑音が大きいため、低雑音で高安定なミリ波信号を生成する回路技術が求められていた。

1周期あたりの比較回数を増やす

 そこで今回、両社は、複数の位相差検出回路と遅延回路を直列に接続し、複数回比較処理を行う新しいアーキテクチャを開発した(図3)。新しい回路では比較信号の周波数を高くし、さらに基準信号を分配して複数にすることにより、1周期あたりの比較回数を増やすことができる。

 比較して生成する差信号の数が多くなるため、位相差検出回路が発生する雑音に対して、比較結果の差信号を相対的に大きくすることが可能である。これにより、位相差検出回路が発生する雑音の影響を少なくでき、信号における雑音を従来回路に比べて約1/3(-5dB)に低減することに成功した。

 開発した回路技術を用いることにより、従来困難だったSi半導体を用いたミリ波送受信ICを実現できるメドを得た。これにより、車載レーダーなどのミリ波送受信機の高機能化・量産化に大きく貢献できるとする。今後、両社は、同技術を利用して、一体型のミリ波送受信ICモジュールを開発していく。

 なお、今回の技術の詳細は、2013年10月6日からドイツで開催される国際会議「EuMIC 2013(European Microwave Integrated Circuits Conference 2013)」で発表される。