PR
東工大の松澤氏
東工大の松澤氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「アナログ・グルとの集い」(主催:日経エレクトロニクス)と題したアナログ技術関連の講演会が2013年10月30日に開催された。最初に登壇したのは、東京工業大学 大学院理工学研究科で教授を務める松澤 昭氏である。同氏は冒頭で、「アナログからデジタルへの移行は、テレビのデジタル化で終了した。今後は、新しい成長ストーリーが必要になる。そのストーリーの中でアナログが差異化技術になるのは間違いない」と語った。

 ただし、アナログ技術と言っても、その範囲は極めて広い。同氏が今後注目すべきアナログ技術として例を挙げたのは次の2つである。

 1つは、プログラマブル・アナログである。一方で、アナログ回路の設計は難しく、アナログ設計者の数は少ない。「簡単そうに見えて、とても難しい。設計には多くの時間が掛かる」(同氏)。そこで同氏が解決策に挙げるのが、アナログ回路のプログラマブル化である。一般に、センサー・システムでも受信システムでも、アナログ・フロントエンドの構成はほぼ1つの形式に集約できる。しかも、いずれも回路要素は少ない。従って、ひな形となる回路(コア回路)をいくつか用意しておき、簡単なプログラムを記述したり、パラメータを設定したりするだけで、所望のアナログ回路を得るシステムを構築することが可能だという。実現のポイントは5つある。1つは、コア回路の種類をできる限り絞ること。2つめは、微細化と低電圧化に耐えうる回路を選択すること。3つめは、レイアウトに規則性があるものだけを選ぶこと。4つめは、レイアウトを含めて設計作業の大半を自動化すること。5つめは、テスト容易化設計も取り込むことである。

 2つめは、ダイナミックなアナログ回路である。具体的には、非常に広い(ダイナミックな)用途に対応できる1つのアナログICを実現しようというものだ。例えば、A-D変換器では、低いサンプリング周波数から高いサンプリング周波数までを1つのICで対応できるようにする。消費電力は、それに比例して増減する。

 松澤氏は最後に、アナログ技術を発展させるために不可欠な点として「卓越性を追求すること」を挙げた。卓越性とは、言い換えれば差異化技術である。アナログ技術に関して言えば、差異化の源泉はほぼ人材である。従って、教育が極めて重要になるわけだ。同氏は、アナログ教育については次の2点が重要だとしている。1つは、しっかりとした理論を習得させることである。「アナログは勘と経験が大事という意見もあるが、勘は理論に基づくものでなければならない」(同氏)。もう1つは、失敗の経験である。「失敗が許されないと、あり合わせの技術で済ましてしまう。それでは大きな成長の機会を失ってしまう。企業も大学も失敗について、再考すべきである」(同氏)。