電荷分離の際に0.4 eVのエネルギー損失がある場合の光電変換効率の理論限界と太陽電池が吸収できる光エネルギーの最小値(光吸収端エネルギー)との関係。赤線は無機太陽電池の理論限界、青線は有機太陽電池の新しい理論限界を示す(出所:産業技術総合研究所)
電荷分離の際に0.4 eVのエネルギー損失がある場合の光電変換効率の理論限界と太陽電池が吸収できる光エネルギーの最小値(光吸収端エネルギー)との関係。赤線は無機太陽電池の理論限界、青線は有機太陽電池の新しい理論限界を示す(出所:産業技術総合研究所)
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 産業技術総合研究所は、新世代の太陽電池として注目される「有機太陽電池」に関して、太陽光を電気に変換する割合である「光電変換効率」(以下、変換効率)の理論的な限界をシミュレーションし、約21%と算出した。有機太陽電池の変換効率の理論限界の検討は、産総研の太陽光発電工学研究センターを中心に、環境・エネルギー、計測・計量標準、ナノテクノロジー・材料・製造の各分野の研究員が連携し、各分野の研究員からなる有機太陽電池限界効率検討会にて取り組んできた。今回、理論的に計算された限界値・約21 %は、現状の効率である10~12 %より十分高く、今後、材料の選択や改良、構造の最適化によって変換効率のさらなる向上が期待できることを示しているという。

 現在主流の結晶シリコン型太陽電池など無機太陽電池の変換効率の理論限界は知られていた。これをもとに、無機太陽電池と有機太陽電池の、光を吸収した後に電気を生み出す機構の違いを考慮に入れて、有機太陽電池の変換効率の理論的限界を算出した。この成果は、有機太陽電池の変換効率は「どこまで向上できるか」という研究開発の指針となることが期待されるという。今回の成果は、米国応用物理学会誌Applied Physics Lettersのオンライン版で近く公開される。

 有機太陽電池は有機材料特有の軽量で薄く柔らかい特性を持っているために、これまで結晶シリコン型太陽光パネルを設置しにくかった場所や用途での設置を可能にする新世代の太陽電池として期待されている。ただ、結晶シリコン型に比べ、変換効率や耐久性の向上が技術課題であった。しかし、近年、変換効率は急速に向上しており、アモルファス(非晶質)シリコン太陽電池並みの10 %を超える変換効率が報告されている。このため、有機太陽電池の変換効率は「どこまで向上できるのか」という点に関心が集まっている。無機半導体の太陽電池については、ShockleyとQueisserにより1961年に変換効率の理論的な限界として約30 %が示されたが、近年、実際の効率がこの値に近づき、無機太陽電池の最近の研究開発は、多接合型や集光型など、ShockleyとQueisserの理論では考慮されていなかった機構を導入することで、効率を向上させる方向に進んでいる。一方、有機太陽電池の変換効率も急伸し、「どこまで向上できるのか」という指針が必要なレベルに達しており、ShockleyとQueisserの理論のような限界効率を求めることが望まれていた。