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図1 体内埋め込み型機器と体表面のそれぞれに2枚の電極を配置する(図:東京理科大学)
図1 体内埋め込み型機器と体表面のそれぞれに2枚の電極を配置する(図:東京理科大学)
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図2 試作した装置。写真上部の通信装置を、写真下部の食塩水の中に入れてワイヤレスでデータを伝送する。受信電極は食塩水が入ったアクリル容器の内部に貼り付けてある。(写真:東京理科大学)
図2 試作した装置。写真上部の通信装置を、写真下部の食塩水の中に入れてワイヤレスでデータを伝送する。受信電極は食塩水が入ったアクリル容器の内部に貼り付けてある。(写真:東京理科大学)
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 東京理科大学 基礎工学部 電子応用工学科 准教授の柴建次氏の研究グループは、高周波微弱電流を用いて体内深部から体外にワイヤレスで情報伝送する技術を開発した。埋め込み型の人工臓器や、カプセル型の内視鏡などが体内で得た情報を体外に送信する用途に向ける。柴氏の研究グループは2014年から機器メーカーとの共同研究を開始し、通信モジュールの小型化やデジタル化を推進する予定。

 柴氏らが開発した体内-体外通信技術は、体内埋め込み型機器と体表面のそれぞれに2枚の電極を装着し、体内と体表面の電極間の容量結合によって微弱電流を人体組織中に伝搬させるものである(図1)。埋め込み型機器の電極間に交流電圧を印加すると、体表面の電極間の電圧が変化する。この電圧変化を体外で検出することにより、体内埋め込み型機器からの情報を受信する。体内埋め込み型機器の筐体の一部を送信電極として利用できるため、送信アンテナのスペースを確保する必要がなく、小型化に適している。

 10mm×8mmの送信電極を備える通信装置を試作し、生体を模した食塩水を介して20mm×20mmの受信電極との間で通信する実験を行った(図2)。周波数が600kHzの搬送波を使ってFM変調でデータを送信した。この実験では、食塩水に沈めたときだけデータを伝送でき、空気中では電流が伝播しないためにデータが伝送できないことを確認した。医療機器のデータ伝送に求められる秘匿性を確保しやすい利点がある。

 出力電圧が約58mVのとき、人体組織内を伝搬する微弱電流の電流密度は0.12mA/cm2で、生体にとって安全とされる制限値の0.6mA/cm2を大きく下回る。消費電力も9.4μWと小さい。

 柴氏のグループは今後、機器メーカーとの共同研究によって実用化を推進する他、この技術とワイヤレス給電技術を組み合わせることにより、埋め込み型機器の駆動と埋め込み型機器からのデータ伝送を電池レスで行う研究を進める予定である。