PR
今回Cu-CNT複合材料で作製した微細配線。顕微鏡での拡大映像。この映像での配線幅は最小で1μmである。
今回Cu-CNT複合材料で作製した微細配線。顕微鏡での拡大映像。この映像での配線幅は最小で1μmである。
[画像のクリックで拡大表示]
布状の単層CNTとそれを転写する手法
布状の単層CNTとそれを転写する手法
[画像のクリックで拡大表示]
多段配線を形成した様子
多段配線を形成した様子
[画像のクリックで拡大表示]

 単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)と産業技術総合研究所、および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、単層カーボンナノチューブ(CNT)と銅(Cu)の複合材料を用いて、配線幅が最小0.5μmの微細配線パターンの形成に成功したと発表した。許容電流密度はCuの100倍、一方で熱膨張係数はSiの3.0ppm/Kに近い4.2~6.3ppm/Kで、大電流を流して温度が上昇しても生じる歪みは小さい。

 TASCなどはこの結果を、2014年1月29日~31日に開催される展示会「nano tech 2014」に出展するという。

CuをCNTで補強

 TASCと産総研は2013年7月23日に、単層CNTとCuの複合材料で、許容電流密度はCuの100倍、電気伝導度はCuと同程度を実現したと発表していた。許容電流密度は、大電流を流した際の配線の強度に関係した値で、電気伝導度とは一般的にはトレードオフの関係にある。複合材料では、単層CNTの内部などに電気めっきでCu粒子を成長させ、鉄筋コンクリートのような構造にすることで、二つの値を高い水準で両立させた。

 具体的には、新材料の許容電流密度は、108A/cm2程度で、Cuの106A/cm2を2ケタ上回った。ただし、当時は半導体製造プロセスにおける配線パターンの形成手法には触れていなかった。

 今回は、その材料で実際にSiチップ上に微細配線パターンを形成してみせた。ポイントになった技術の一つは、産総研などが開発した「スーパーグロース法」という高い配向を備えた単層CNTの製造技術において、布状の単層CNTを作製できたことである。同じ配向を持つ単層CNT1本1本が互いに絡み合うことで布状になっている。「触媒を線状に配置することで作製できた」(産総研 ナノチューブ応用研究センター 首席研究員の畠賢治氏)という。

 この布状の単層CNTを1枚ずつはがしてSiチップ上に置き、それをパターニングした後にCuを電気めっきで付着させる。こうして作製した複合材料の配線は、従来の手法で作製した材料とほぼ同じ電気伝導特性を示した。現時点での配線幅は「0.5μm~数十μm」(産総研)だとする。

 ただし、現時点では、配線の向きと単層CNTの配向は必ずしも一致していない。単層CNTの配向と電流を流す方向が異なると電気的特性も大きく違ってくるというが、「配線の向きごとにプロセスを分けることで解決できる」(産総研の畠氏)という。

熱膨張率はSiに近い

 加えて今回は、新材料の熱膨張係数についても発表した。従来、Cuの熱膨張係数は17.0ppm/Kで、Siの3.0ppm/Kと大きく解離していた。これがCuのビアの利用時などに信頼性を低下させる要因になり、大きな課題になっていたという。今回の材料では、熱膨張係数がほぼ0ppm/Kと非常に小さいCNTとCuを組み合わせることで、熱膨張係数を両材料の中間的な値に抑え込み、Siの値に近づけることができたとする。

 産総研によれば、当面の想定用途は、(1)大きな熱膨張係数が課題になっているCuのビアの代替、(2)大電流が流れる半導体の後工程での配線やパワー半導体の配線、(3)MEMS向けインターポーザーの配線など、である。

 もっとも実際には、まだこの材料を半導体製造プロセスで利用することはできない。1~2mm角しかない布状の単層CNTをSiの300mmウエハー並みに大きくすることが難しいからで、実用化には「別の手法を使うことを考えている」(畠氏)という。