PR

 総務省などは、主に衛星を利用した4K/8K映像の放送についての方式やパラメーターをほぼ固めた。衛星を使った4K/8K放送については、124/128度CSなどを用いた4K放送が2014年に、110度CSなどを利用した4K/8K放送が2016年に、BSなどでの4K/8K放送が2020年に開始される計画だ(日経エレクトロニクスの関連記事)。

 総務省 情報通信審議会 情報通信技術分科会 放送システム委員会は2014年1月24日、超高精細度テレビジョン放送システム作業班(第5回)を開催した。同作業班は、2014年に開始予定の4K衛星放送、2016年に開始予定の4K/8Kでの衛星放送の技術仕様を取りまとめるのが目的の会議である。今後大きな異論が出なければ今回が最後の作業班となる見込みで、作業班としての最終報告案が取りまとめられた。総務省は作業班の締めくくりとして「これだけ短期間に、たたき台をまとめられたのは歴史に残る」とあいさつした。

 その概要は、(1)2014年に開始する予定の4K衛星放送と、(2)2016年以降に開始する予定の4K/8K衛星放送に大別される。

 (1)は、2013年5月に結成された産官学の団体「次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)」が、スカパーJSATの124/128度CSを用いて2014年6~7月に開始予定の放送である。人工衛星の中継器の周波数帯域幅は27MHz。4K映像を動画符号化方式HEVC(H.265)で最大45Mビット/秒のデータ伝送速度に圧縮して、変調方式の8PSKで送受信する。

 映像や音声、各種制御信号などの多重化方式には、現在一般的なMPEG-2 TSを用いる。

 一方、(2)は、今後打ち上げ予定の左旋の110度CS衛星、そしてBS衛星の放送チャネルを利用して、やはりNexTV-Fが2016年および2020年に開始する4K/8K放送である。中継器の周波数帯域幅は34.5MHz。4Kまたは8K映像をHEVCで約100Mビット/秒に圧縮し、8PSKなどに加えて16APSKまたは32APSKで送受信する。報告書では、16APSKの場合、符号化率が7/9であれば100Mビット/秒のデータが伝送できるとする。

放送データをIPパケットで伝送

 (2)における多重化方式には、MPEG Media Transport(MMT)・Type Length Value(TLV)と呼ぶ新方式を基本方式として採用した。ただし、既存のMPEG-2 TSも追加規定として併記した。一方、最近まで候補に挙がっていたMPEG-2 TSの拡張方式「TSタイムライン拡張」は、規定から削除された。ISO/IECでの標準化が2014年秋と、総務省が想定する期日に間に合わないというのが理由である。

 MMT・TLV方式は、IP(internet protocol)パケットの中に、映像信号や音声信号、制御信号を格納して伝送する方式である。これにより、伝送路としての放送と通信の区別がなくなることになる。放送用電波と通信路を同時に利用することも可能で、放送用電波では不特定多数の視聴者向けのメイン・カメラの映像、通信路では、視聴者個人が選んだサブ・カメラの映像をそれぞれ伝送する、ということも可能になる。

120p採用には疑問の声も

 (1)と(2)で共通する仕様もある。共に、誤り訂正符号として低密度パリティ・チェック(LDPC)符号を採用した。また、フレーム周波数としては、60Hzかつプログレッシブ方式(60p)や120pが規定された。日本でのデジタル放送は現時点では60Hzのインターレース方式(60i)であるため、4K/8K放送では、動きの速い映像がより鮮明に見えると期待できる。

 4K/8K映像のフレーム周波数はこれまでは60pが採用されるというのが、NHKを除く多くの放送関係者の認識だった。8K映像などは60pでさえ衛星放送の中継器の伝送容量に収まるか微妙な状態。ましてや120pなどは無理という認識だったからだ。「そもそも何故120pが必要なのか」という質問さえ作業班メンバーから飛び出した。

 作業班の担当者によれば、120pは「動きボケ」と言われる動きの速い映像が不鮮明になる現象を改善するのに有効だという。その上で、120p追加の決め手になったのは、4Kや8K映像の伝送帯域を調べる実証実験だったとする。この実験では、60pに対して120pでどの程度帯域が増えるかなどの点を検証した。結果、120pは、60pに対する所要ビットレートの増加が最大10数%に収まることが分かったとする。

 ただし、衛星放送において120pでの8K放送が実施可能かどうかはまだ不透明だ。120pの伝送には32APSKという多値度の高い変調方式の利用が事実上前提になる。ところが、32APSKは雨天などに弱く、映像が途切れる時間が増えると予想されるためだ。これを回避するには、衛星で利用可能な最大の出力で電波を出した上で、できるだけ大きな受信アンテナが必要になる。

 例えば東京では直径60cm以上の受信アンテナが必要で、それでも現状の衛星放送に比べて受信可能な時間が多少減るという。「沖縄などではより大きな受信アンテナが必要になる」(同作業班)。

 今後は、今回の作業班による報告案を放送システム委員会としての案として採用するかどうかを決め、その後、パブリック・コメントを経て、3月末に放送システム委員会として最終報告をまとめるという。「もう大きな変更はないのではないか」(作業班のあるメンバー)という見方が大勢だ。