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 英University of Cambridgeは2014年2月3日、同大学 先端光電子工学センターの緒方健氏(JSPSリサーチフェロー)と同大学 化学学部 教授のClare Grey氏によってシリコン(Si)負極を用いた次世代リチウムイオン二次電池の内部反応を実験的に解析可能な技術を開発し、反応機構を解明したと発表した。

 今回の成果によって、従来の数倍程度の容量を備えるリチウムイオン二次電池の開発が加速することが期待できるとしている。詳細は、英科学誌を発行するNature Publishing GroupのNature Communicationsにおいて、「Revealing lithium-silicide phase transformations in nano-structured silicon-based lithium ion batteries via in situ NMR spectroscopy」と題して2月3日付けでオンライン掲載された。

 具体的には、体積膨張を緩和するシリコンナノワイヤを負極に用いた状態で、原子配列の解析が可能な核磁気共鳴技術(NMR)を使った新しい測定システムを開発した。その結果、電池動作中の詳細な原子結合状態の推移を複数回の充放電サイクルにわたって明らかにしたという。実験に使用した電池セルは、負極にシリコンナノワイヤとカーボンファイバー複合体、正極にリチウムシート(Li金属箔)を使い、ポリエステルバックにラミネートした。電解質は、1M LiPF6をエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)に溶解した。シリコンナノワイヤの直径は約60nmで長さは約50nmである。

 緒方氏によれば、「今回の技術によりシリコン負極の劣化原因となる原子結合状態が非常にシンプルに解析可能となった。これにより劣化を意図的に回避する材料設計や安全性のコントロールに対する道筋を示すことができた」としている。

 Siは高容量化が可能な負極として注目を集めているが、Si原子は最大で4個程度のリチウム原子と合金化するため、充放電で体積が最大で300%程度の膨張・収縮を繰り返し、耐久性に難があった。また、Si合金は無秩序に原子が並んだ状態にあることが多く、従来の解析方法で詳細な原子レベルの情報を得るのは難しかったという。

カーボンファイバー上に成長させたシリコンナノワイヤのSEM写真。(a)が平面写真、(b)が断面写真、(c)が(b)を拡大したもの。(d)はシリコンナノワイヤ電極をベースにしたリチウムイオン電池とその場核磁気共鳴測定器の実験概念図。
カーボンファイバー上に成長させたシリコンナノワイヤのSEM写真。(a)が平面写真、(b)が断面写真、(c)が(b)を拡大したもの。(d)はシリコンナノワイヤ電極をベースにしたリチウムイオン電池とその場核磁気共鳴測定器の実験概念図。
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