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開発したやわらかい無線タグ。左下の回路が整流回路や静電気保護回路。右下の回路が水分センサーとして働くリング発振器。
開発したやわらかい無線タグ。左下の回路が整流回路や静電気保護回路。右下の回路が水分センサーとして働くリング発振器。
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整流回路、リング発振回路、静電気保護回路の詳細(写真:東京大学)
整流回路、リング発振回路、静電気保護回路の詳細(写真:東京大学)
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上記の回路は、まず別のフィルム上に作製してから、無線タグに貼り付けている。
上記の回路は、まず別のフィルム上に作製してから、無線タグに貼り付けている。
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おむつに装着した例
おむつに装着した例
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 東京大学の研究者は、水分センサー機能付きのやわらかいRFIDタグ(無線タグ)システムを開発した。タグには有機トランジスタ30個弱と有機ダイオードなどを集積。電力は電磁界共鳴方式のワイヤレス給電技術でリーダー装置から送電するため、タグをリーダー装置から数cm離すことができるとする。詳細は、米サンフランシスコ市で開催された半導体の国際学会「International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)2014」で発表した。

 開発したのは、東京大学 生産技術研究所 桜井貴康氏と同大学 大学院 工学系研究科 教授の染谷隆夫氏の研究グループ。今回のシステムは、無線タグとリーダーから成る。リーダー装置は、無線タグに電力を無線で給電するとともに、無線タグからの応答を受信してデータを読み取る役割をしている。無線の周波数には13.56MHzを用いたとする。

 「これまでの無線タグやセンサはモノに付けていたが、今後は人に付ける用途が増える。そのためには、タグがフレキシブルである必要が出てくる」(桜井氏)、と考えて今回の無線タグシステムを開発したとする。

 無線タグは寸法が78mm×53mmで、12.5μm厚のポリイミド・フィルム上に受電用コイルや各種回路を真空蒸着で形成した。回路は(1)受電用の整流回路、(2)2kVまでの静電気保護回路、(3)水分センサーとして機能するリング発振回路、の3種類から成る。コイルや長い配線にはCu、電極などにはAuを利用。フィルム上の配線/回路はおよそ3層から成り、各層はAuのビアを介してつながっている。

 (1)と(2)の整流回路と静電気保護回路は、ショットキー型の有機ダイオードで構成した。有機ダイオードの半導体にはフタロシアニン系のp型有機半導体材料を用いた。静電気保護回路は、人間にタグを付けることで必須になるという。「体の周りの静電気は、1kVから1.5kVであるのが一般的。2kVまで対応すればほぼOK」(桜井氏)。

 (3)のリング発振回路に用いた有機トランジスタには、チオフェン系のp型有機半導体材料を用いた。キャリア移動度は約1cm2/Vsと比較的高いが、リング発振器としての発振周波数は3Hz~10Hzだとする。回路の一部がフィルム状に露出した電極で途切れており、そこに水分があると電極間の電気抵抗が低下して発振が始まるようになっている。発振しなければ水分なし、発振すれば水分があることを示す。

 発振した場合は、リーダー装置から送られてくる13.56MHzの電磁界に発振周波数を重畳してリーダー装置に送り返す。無線タグ内では13.56MHzの信号は生成しない。「リーダー装置からの電磁界を反射するイメージ」(東京大学 生産技術研究所 助教の更田裕司氏)という。

 ワイヤレス給電技術に電磁界共鳴方式を用いたことで、従来の電磁誘導方式で最大5~10mmだった無線伝送距離が4cm以上に伸びたとする。無線タグは曲率半径2mmほどまで曲げても動作することを確認した。一方、リーダー装置には、タグが曲げられて受電コイルのインダクタンスが変化した際に、その変化を検知して送信電圧を調整する機能を実装した。「この機能で、消費電力を最大92%低減した」(染谷氏)という。

 ちなみに、物流現場などで実用化されている無線タグでは、リーダー/ライター装置からの距離が1m~数mと長いものがある。「その場合は、電波の周波数がずっと高くて有機トランジスタの性能を大幅に高める必要があり、今回は難しかった」(更田氏)。

 伝送距離数cmの今回の無線タグで想定する用途は、おむつや絆創膏など。おむつに用いる場合は、リーダー装置をおむつの外側に装着し、さらにそこからBluetoothや無線LANなどで携帯端末に状態を知らせることで、赤ちゃんなどから離れた人にもおむつの状態が分かるとする。