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図1 當麻寺本堂のご本尊「當麻曼陀羅」
図1 當麻寺本堂のご本尊「當麻曼陀羅」
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 ロームは、エネルギー・ハーベスティング技術を用いた電池不要の無線通信技術「EnOcean」を用いたLED照明システムが、奈良県葛城市の當麻寺に採用されたことを発表した。EnOceanが日本の寺院に採用されるのは、今回が初めて。

 今回のLED照明システムは、国宝や重要文化財を多数収蔵される伽藍三堂(本堂、金堂、講堂)に2014年1月中旬に設置された(図1)。これまで伽藍三堂には十分な照明設備がなく、夕刻は堂内が非常に暗い状態だった。「堂内が暗いと當麻寺のご本尊である曼陀羅の図をはっきりと拝んでいただくことができなかった」(當麻寺)ため、LED照明の導入に踏み切った。

 照明コンサルティング会社である灯工舎が照明演出の設計施工を担当。ロームがEnOceanを用いた照明スイッチシステムを、照明メーカーのシーシーエスがLED照明機器を納めた( Tech-On! 関連記事1同2)。

歴史的建造物を痛めないことが必須条件


 當麻寺は飛鳥時代に創建され、白鳳・天平様式の大伽藍を有する。金堂の弥勒仏や四天王などの白鳳美術をはじめとした歴史的に重要な寺宝・文化財を多数収蔵されている。照明のライト(光源)部分は天井や梁など隠れたところに配線工事できるが、スイッチは入口から近い場所に付ける必要がある。このため、配線によって美観が損なわれるうえ、有線ケーブルの配線をねじ止めすると歴史的建造物を痛めてしまう。

 「今回のプロジェクトの最大の難問は、伽藍三堂の建物自体がすべて国宝、重要文化財といった指定文化財であることだった。その為には、建造物を可能な限り痛めないことが必須条件。それにはネジを使用しない、機器設置には指定の緩衝材を挟みこむなど徹底した配慮が求められた」――。設計施工を担当した灯工舎はこう振り返る。

 ロームが提供したEnOceanの照明スイッチは、ユーザーがボタンを押す動きを電力に変換し、オン/オフの制御情報やそのボタンの固有IDなどの情報を無線通信する。このため、電源の配線や電池を不要にできる。歴史的に非常に価値の高い建造物への影響が小さいことが評価され、「文化庁の工事認可も得ることができた」(ローム)。當麻寺奥院 住職の川中光教氏は「文化財の保護はもちろんだが、美観的にも国宝の建物にぴったり」と同システムを採用した理由を述べている。

 EnOceanを用いた照明スイッチは、欧州では既にビルや歴史的建造物など40万棟以上で採用実績がある。2012年4月には、国際標準規格「ISO/IEC14543-3-10」として採択された。送受信周波数は315MHz帯、868MHz帯、920MHz帯を使えるが、當麻寺のシステムでは315MHz帯を用いた。