モジュール式計測制御機器大手の米National Instruments社は、プライベートイベント「NI Week 2014」を本社のあるテキサス州Austinで開催した(会期は8月4日~7日)。Austinのコンベンションンターを丸ごと借り切った大型のイベントで、参加者は4000名を超える。プライベートイベントとは言え参加費は必要で、一般・個人は1350米ドル。ほとんどが有償で参加しているという。
NI Weekは、展示会と講演会からなり、前者にはNI自身とパートナー企業が出展する。講演会では、NI自身、パートナー企業、さらにユーザーが発表する。初日はアカデミックフォーラムで、本体は5日~7日の3日間。3日間とも午前中には基調講演があり、同社が力点を置く開発/活動の説明や、新製品の紹介がある。
IoTやIndustry 4.0、Cyber Physical Systemが背景
NIの主な製品はモジュール式のハードウエアと、開発用のソフトウエアツール「NI LabVIEW」で、容易に計測・制御システムが構成できることが最大の特徴と言える。これまでは主に、研究開発や量産個数の少ない製品開発に使われてきた。NI Weekには例年、このようにNI製品を使っているユーザーが多く集まり、それを意識した基調講演が行われてきた。例えば、LabVIEWの新機能が紹介されると、大きな拍手で会場全体が沸いた。米Apple社の発表会を彷彿とさせるファンの集いという雰囲気があった。
今年のNI Weekの基調講演は随分と雰囲気が変わった。個々のエンジニアが開発に使うことを否定しているわけではないが、紹介される採用事例や新製品が、多数のエンジニアからなる組織や企業、量産を狙ったものが目立った。ある意味、普通の計測制御機器メーカーの発表に近かった。
こうした変化の背景には、市場の変化がある。登壇したNIのJames J. Truchard氏(President, CEO, and Cofounder、図1)が挙げたキーワード、IoTやIndustry 4.0、Cyber Physical Systemにあるように、多数の機器がつながったシステムの重要度が増している。NIが事業を拡大するためには、こうしたシステムを運用する一定以上の規模の組織を狙う必要がある。また、LabVIEWが登場して28年が経ち、「開発や個々のエンジニアでの実績が蓄積し、より大きな組織でも使ってもらえるようになった」(NIのScott Rust氏、Senior Vice President, R&D、図2)ということも考えらえる。
InfineonやIDTが量産テストに活用
「組織・量産」を象徴する製品が、今回の基調講演で紹介された量産用のICテスター「Semiconductor Test System(STS)」である(ニュースリリース1)。STSはアナログICやミックストシグナルICをターゲットにする。既存のPXIシャーシやPXIモジュールをベースに、一般的な量産用ICテスターのような筐体、ロードボード、さらにLabVIEWやテスト管理ソフトウエア「TestStand」を組み合わせて実現した(図3)。
すでに独Infineon Technologies社と米Integrated Device Technology社などが量産テストに適用しているという。今回の基調講演には、IDTからRebeca Jimenez氏(Vice President, Worldwide Test Operations)らが登壇した(図4)。IDTでは3台のSTSが稼働している。今後は台数を増やすと共に、開発向けのテスト設計環境と量産向けのテスト設計環境をLabVIEWで統合して、テスト全体の効率を上げたいとした。
このほか、今回の基調講演では、新製品として「NI cDAQ-9134」(図5)と「NI LabVIEW 2014」などが紹介された。前者は、外付けのPCなしで稼働するCompcatDAQコントローラーの新製品で、4スロットを備える(ニュースリリース2)。これまで、外付けのPCなしで稼働するCompcatDAQコントローラーは8スロット品しかなかった。今回、小規模品を追加した。NI cDAQ-9134のCPUは米Intel社のMPU「Atom Processor E3825」である。後者のLabVIEW 2014では主に対応できるハードウエアモジュールを広げた(日本語ニュースリリース3)。
この記事の掲載当初、下から2番目の段落の最初の文章で「米Analog Devices社と米Integrated Device Technology社」としていたのは、「独Infineon Technologies社と米Integrated Device Technology社」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。