ドイツの放送業者やメーカー、研究所が参加する次世代放送推進組織「Deutsche TV-Platform」のセミナー(関連記事)で、ドイツの研究機関のフラウンホーファー研究機構(Fraunhofer-Gesellschaft)が興味深い提案をした。10Kと高解像度の、全周360度カメラについてである。
Fraunhofer研究機構の研究所「Heinrich Hertz Institute」(ドイツ・ベルリン)は2008年に全周360度カメラ「OmniCam-360」を開発し、その後、解像度向上、コンバクト化などの機能向上を重ねてきた。2013年に開発された最新モデルは横1万×縦2000の画素数を持つ。つまり4K画面ではなく10Kだ。36度ずつ分割された鏡の反射を10台の小型カメラで撮影し、全周映像とする。コンパクトな形で、質量も初代の80kgから15kgまで削減された。どこにでも移動、設置することが可能だ。
2014年7月13日に行われた、サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会の決勝戦、ドイツ対アルゼンチン戦がOmniCamで撮影されている。この全周映像はスイス・チューリッヒにある「FIFA World Football Museum」で上映される予定だ。ベルリン・フィルハーモニーのコンサートホールである、英国ロンドンのBBCプロムナード・コンサートなどでも全周撮影している。
再生では、そのまま全周映像として活用する他に、セカンドスクリーン(タブレット端末など)に切り取って表示することも考えられている。いずれも4K映像の新しい応用として注目される。ハイレゾ映像の活用として、大きな映像から小さな映像に切り出せるメリットが最近説かれ始めているが、その究極の姿をOmniCam-360に見た。