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◎三菱自動車開発本部設計マスター(EVコンポ担当)の吉田裕明氏。量産型EV「i-MiEV」の“生みの親”。
◎三菱自動車開発本部設計マスター(EVコンポ担当)の吉田裕明氏。量産型EV「i-MiEV」の“生みの親”。
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──日本ではHEVの、欧州ではディーゼルエンジン車の人気が特に高い。こうした地域の市場特性や、会社の規模などにより、自動車メーカー間でEV開発には温度差がありそうですね。

吉田氏:そうでしょうか。実際には、日本であろうが海外であろうが、向かっている先は、そう変わらないと私は考えています。当社はEVの量産化で先駆けましたが、BMW社やVolkswagen社がキャッチアップしてきました。トヨタ自動車やホンダのような大手は、全ての環境車を手掛ける「全方位戦略」を採っています。その上、足下ではHEVが売れている。こうした中で見えにくいだけで、トヨタ自動車にもホンダにもEVの開発を手掛けている人がいる。要するに、どの自動車メーカーもEVの開発に本気で取り組んでいるというのが、現実だと思います。

 そう考える理由の1つは、EVは既に「大きな谷」を抜けている点にあります。つまり、技術面に関して量産化のための高いハードルを越えていることです。確かに、将来のクルマの選択肢は1つではありません。しかし、例えば燃料電池車(FCV)は、量産化のハードルをこれから越えなければなりません。車体を造る技術は、ある程度確立しつつあるかもしれません。しかし、水素インフラを整備するのは非常に大変です。例えば、水素スタンドは1基当たり数億円の費用が掛かると言われています。そこまで費用を要しない急速充電器ですら、日本に現在、2000台程度しかありません。FCVを普及させるには、いくつもの高いハードルをこれから越える必要があるのです。


──量産化の技術的課題を乗り越えたEVが普及するために、さらに解決すべき課題は何でしょうか。

吉田氏:航続距離とエネルギーの供給時間という2つの課題でしょう。エンジン車もFCVも、満タンにすれば航続距離が500kmを超えますし、ガソリンも水素も3分もあれば燃料タンクに供給できます。これに対し、例えばi-MiEVでは満充電の場合の航続距離(1充電航続距離)がJC08モードで120kmまたは180km(グレードによって異なる)で、充電時間は、出力が50kWの急速充電器を使っても30分程度かかります。Tesla Motors社のEVなどはi-MiEVの何倍もの容量のバッテリーを積んでいるので、その分、充電に要する時間も長くなります。

 しかし、既に1つの解はあります。ワイヤレス給電です。最初は駐車場のような所で使われると思いますが、将来的には、走行中のワイヤレス給電ができるようになるかもしれません。実際、韓国では万博においてワイヤレス給電で充電しながら電動バスを走行させました。日本でも研究開発が進んでいて、既に試験品レベルは完成しています。
 走行中のワイヤレス給電が実現すれば、バッテリーを小さくしても、航続距離を長く、充電時間を短く、いや、充電時間を気にせずに充電することが可能になります。すると、現状ではバッテリーの積載量から小型車から中型車に限られているEVも、より大型のクルマに展開できる可能性が開けてきます。

 電波法などの法規制への対応やインフラ整備の課題はあります。特に、安全性が確保されなければ、実用化は難しい。しかし、ワイヤレス給電は技術的には可能な領域にあるのです。