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福島県会津若松市が目指すスマートシティは、再生可能エネルギーの利用だけにとどまらない。エネルギーの効率化とICTの利用で産官学による新たな産業創出を目指す。

スマートフォンでHEMSの説明をする室井照平・会津若松市長(写真:日経アーキテクチュア)
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 「メーカーごとに、まったく新しくスマートシティをつくっていくのは現実的ではありません。外から見た形が極端に変わるということではなく、意識が変わり、街のシステムが変わっていくことが大事です。狭い意味のエネルギー分野だけでなく、市民の生活環境などを含む地域づくり全体を、電力エネルギー改革とICTで結びつけていきたいと思っています」

 会津若松市の室井照平市長は、同市のスマートシティの方向性についてこう語る。

メーカーに囲い込ませない

 HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の導入実証など、具体的な取り組みもいくつかスタートしている。東芝、パナソニック、オムロンのHEMSを100世帯に振り分けて導入。3社のHEMSがそれぞれ計測した消費電力量のデータを、会津大学と地元企業で構成する会津若松スマートシティ推進協議会が集約して一括管理している。

 日本のHEMSは、各社の家電とHEMSとの互換性を持たせるため、標準通信規格として「ECHONET Lite(エコーネットライト)」が定められているが、各戸からHEMSが取得した電力の消費状況のデータ形式は統一されていない。また、データは各社がそれぞれデータセンターで管理しており相互利用はできない。

 会津若松市の取り組みは、このように各社が囲い込んでいたHEMSの計測データを、標準化したオープンなAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)によってデータ連携したものだ。前記3社が会津若松市の実証に協力したことで、メーカー横断での消費電力データの管理が実現したのである。

各社のHEMSのデータを市民に代わって会津若松スマートシティ推進協議会が管理する。APIは地元ベンチャーなどにも公開し、同意を得たデータを利用できるようにする。総務省の「スマートグリッド通信インターフェース導入事業」に採択された。(資料:アクセンチュア)
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 このHEMSデータのオープン化には、どんな意味があるのか。会津若松市、会津大学と共同で産業振興と雇用創出の構想策定の基本協定を結んでいるアクセンチュアの福島イノベーションセンター長で、同市のスマートシティ会津若松推進アドバイザーも務める中村彰二朗氏は、「市民のデータは市民のもの、という状況をつくりたかった」と説明する。

 電力消費のデータを利用者自らが管理し、同意した部分の情報については広く公開する。これにより、地域全体の世帯の電力消費状況が把握できるようになる。すると例えば、自治体が省電力プロジェクトを行おうとするときに、省エネに貢献した世帯へのインセンティブ付与を行いたい場合などにこのデータが使える。各社がデータを囲い込んでいては実現は困難だろう。

 消費電力量をパソコンやスマートフォン、タブレット端末画面で「見える化」するためのアプリケーションは、地元ベンチャー企業が開発している。画面表示のためのデータが標準化されてオープンになっているので、技術力のある地元企業に依頼できた。中村氏はさらに「地元企業がHEMS本体を安価で提供するといったことも考えられる。HEMSの構成部品自体は安いので、APIのオープン化によってハードの参入障壁は下がる」と見る。囲い込みを取り外したことで広がった可能性の1つといえる。