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[図1]プロジェクトのイメージ。
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[図2]「]高機能足場素材とバイオ3Dプリンターを用いた再生組織・臓器の製造技術の開発」のイメージ。
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[図3]「バイオ3Dプリンターで造形した小口径Scaffold free細胞人工血管の臨床開発」のイメージ。
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[図4]「革新的な三次元精密細胞配置法による立体造形と小口径血管を有するバイオハートの研究開発」のイメージ。
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[図5]「組織工学を用いたヒト心臓壁立体造形技術の開発」のイメージ。
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[図6]「細胞シート工学を基盤とした革新的立体臓器製造技術の開発」のイメージ。
[図6]「細胞シート工学を基盤とした革新的立体臓器製造技術の開発」のイメージ。
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、バイオ3Dプリンティングや細胞シートの積層技術といった立体造形技術を用いて、iPS細胞などから立体組織・臓器(骨や血管、心臓など)を製造する技術開発プロジェクトに着手する(ニュースリリース)。従来、再生医療の分野ではiPS細胞の培養や分化誘導など、再生医療に用いる細胞をいかに効率良く調製するかについての技術開発が行われてきた。同プロジェクトでは、これらの細胞を用いて組織・臓器を製造する段階へと再生医療の技術開発をステップアップさせ、再生医療製品の実用化に向けての一歩を踏み出す(図1)。

5テーマの開発プロジェクト

 事業期間は2014年から5年間、総事業費は約25億円を予定しており、今回、5テーマ29社を選定した。具体的には、[1]高機能足場素材とバイオ3Dプリンターを用いた再生組織・臓器の製造技術の開発、[2]バイオ3Dプリンターで造形した小口径Scaffold free細胞人工血管の臨床開発、 [3]革新的な三次元精密細胞配置法による立体造形と小口径血管を有するバイオハートの研究開発、[4]組織工学を用いたヒト心臓壁立体造形技術の開発、[5]細胞シート工学を基盤とした革新的立体臓器製造技術の開発、である。

 [1]では、バイオ3Dプリンターを用いて細胞が住みつくための足場を構築し、そこに細胞を注入することで骨や軟骨・半月板、膝関節、皮膚を作製する。これにより、生体内における組織の再生が可能な新たな再生医療製品の実用化を目指す。骨や軟骨などの治療では、複雑な生体構造を精密に再現し、かつ、速やかに生体になじむ再生医療製品が望まれている。委託予定先は、東京大学、大阪大学、大阪保健医療大学、産業技術総合研究所、富士フイルム、シーメット、JMC、オリンパステルモバイオマテリアルである。

 [2]では、バイオ3Dプリンターを用いた細胞塊の積層技術により、小口径の血管を開発する(図3)。作製される血管は細胞のみで構成されており、血栓が出来にくいことや、しなやかさを併せ持って閉塞に強いため、人工透析など各種臨床ニーズへの応用が期待できる。現在使用されている合成繊維や樹脂製の人工血管は、血栓ができやすいことや、折れ曲がりにより血流が止まりやすいなどの問題から、小口径の製品については実用化には至っていなかった。委託予定先は、佐賀大学、京都府立医科大学、サイフューズである。

 [3]では、特定の複数タンパク質で細胞表面を覆う高分子技術とヒトiPS細胞由来の心筋細胞などを精密に配置する3Dプリンティング技術により、ミクロなレベルから構造と形状が制御された機能的な立体心筋を開発し、新たな再生医療製品としての実用化を目指す(図4)。立体的な心筋の作製においては、心筋中心部へ栄養分や酸素を供給するための血管構築を含め、疾患部の形状に適した立体造形技術が課題となっていた。委託予定先は、大阪大学、東レ、リコー、横浜市立大学、弘前大学、名古屋大学、協和発酵バイオである。

 [4]では、ヒトiPS細胞由来の細胞シートにゼラチンハイドロゲル等の生体吸収性物質などをはさみ込み、酸素や栄養分を供給する仕組みを作ることで、細胞の生存と機能を維持した従来にはない厚みのある立体心筋を作製する(図5)。これにより、治療有効性を高める新たな再生医療製品としての実用化を目指す。これまで、機能的な心筋の作製は、心筋内部の栄養不足により、細胞や組織の機能が低下するという問題があるため難しいとされていた。委託予定先は、京都大学、旭硝子、iHeart Japanである。

 [5]では、生体由来の血管網の上にiPS細胞由来の心筋シートを段階的に積層することで、心筋中心部まで栄養分が供給される構造を作製する(図6)。これにより、細胞密度の高い立体心筋や管状の心臓を開発し、実際の心機能の代替となる新たな再生医療製品としての実用化を目指す。ヒトの心臓と同等の厚みのある立体的な心筋の作製では、その中心部で栄養分などが枯渇することにより細胞が死んでしまうという問題があった。委託予定先は、東京女子医科大学、早稲田大学、慶應義塾大学、大阪大学、東海ヒット、コージンバイオ、セルシード、パナソニックヘルスケアである。

 医療機器の世界市場は約8%の成長率を維持しており、今後も拡大すると予測されている。このような状況の中、日本の医療機器産業は輸入超過(2012年度は貿易収支で約0.7兆円のマイナス)が続いているという。細胞を立体造形する技術を活用して、画期的な再生医療製品を世界に先駆けて実用化することで、日本の医療機器産業などの国際競争力強化を目指す。

 

 なお、プロジェクト期間中にはステージゲート審査を設け、高い実現性が見込まれるテーマに絞り込み、立体組織・臓器の作製技術の実用化を加速する。また、同プロジェクトは、2015年以降は日本医療研究開発機構に移管される予定だ。