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模式的に示した磁気モーメントと新規電気分極成分の関係。X、Z方向はそれぞれ結晶のa, c軸と平行である。
模式的に示した磁気モーメントと新規電気分極成分の関係。X、Z方向はそれぞれ結晶のa, c軸と平行である。
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スマスフェライトの結晶における分極配向の模式図
スマスフェライトの結晶における分極配向の模式図
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形式的に表した3値メモリー。上に示した3方向のQのうち1つを磁場または電場で選択することで、電気分極方向が120度異なる3つの状態を表現できる
形式的に表した3値メモリー。上に示した3方向のQのうち1つを磁場または電場で選択することで、電気分極方向が120度異なる3つの状態を表現できる
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電気分極の磁場依存性
電気分極の磁場依存性
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 東京大学 物性研究所 准教授の徳永将史氏らの研究グループは2015年1月13日、産業技術総合研究所、福岡大学、上智大学、青山学院大学と協力して、ビスマスフェライトでこれまで知られていなかった新たな方向の電気分極成分を発見し、その電気分極が磁場によって制御できることを明らかにできたと発表した。この電気分極は一度磁場を加えると元とは異なる状態に変化し、磁場を除いた後でも変化後の状態を保持し続けるため、不揮発メモリー材料として使える可能性が高い。しかも、この効果は摂氏27度の室温でも観測されたという。

 ビスマスフェライトは、BiFeO3の化学式で表される化合物。代表的な強誘電体であるチタン酸バリウムや、超巨大磁気抵抗で知られるマンガン酸化物と同様のペロブスカイト構造を基本とした結晶構造を持つ。鉛の含まれない強誘電体として大きな自発電気分極を持ち、強誘電性と磁性が共存する「マルチフェロイック状態」にある。

 磁性と強誘電性が共存するマルチフェロイック物質は、これまで将来の省電力メモリーデバイスの候補として盛んに研究されてきたという。しかしこれまでに見つかったマルチフェロイック物質のほとんどは、摂氏マイナス200度以下でしかその特性を示さず、それが実用化に向けた大きな障壁となっていた。ビスマスフェライトは室温でマルチフェロイック状態で動作するため、次世代のメモリー材料として注目を集めていた。ただ、メモリーに使うには、磁性または誘電性の片方を変化させたときにもう片方も変化する性質が必要だった。今回、この現象を確認できた。

 ビスマスフェライトの良質な単結晶試料に強磁場を与えたところ、これまで知られていた結晶のc軸と平行な電気分極の他に、これと垂直な電気分極が存在すること、この新たな電気分極成分が磁場によって制御可能であることが分かったという。変化後はネオジム焼結磁石で出力可能な1T(テスラ)程度の磁場をかけても、この分極成分は変わらなかった。今回、強磁場で特性を変化させたが、今後は実用に向けて電場による制御を試みるという。これまでの報告や今回成果などから電場による制御は可能と見ている。実現すれば、メモリー材料にさらに近づくこととなる。