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試作した超小型アンテナ。緑色の部分がグラウンド。右端のアンテナ素子にSAWフィルターを用いている。(写真:University of Cambridge)
試作した超小型アンテナ。緑色の部分がグラウンド。右端のアンテナ素子にSAWフィルターを用いている。(写真:University of Cambridge)
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 英University of Cambridgeは、誘電体アンテナがアンテナとして電磁波を送受信できる理由を解明したと発表した(発表資料と学術誌「Physical Review Letters」に掲載した論文)。そして、その理解を基にすれば、誘電体アンテナをさらに小型化、そして高効率化できるとする。

 実際、1575MHz帯の電波に対する、7mm×3mm×1mmの小型アンテナ素子も試作してみせた。入力した電力を電波に変換する際の変換効率は60%前後と高いという。同大学はこの技術を用いれば、3GHz帯の電波に対するアンテナを1mm角にすることもでき、チップ上に集積することさえできるとする。ただし、CMOS技術との互換性はないため、量産性を考慮した場合、Siチップへの貼り合わせ、またはICパッケージへの実装になりそうだ。

動作する理由が謎だった誘電体アンテナ

 アンテナは、イタリアの技術者だった Guglielmo Marconi氏が19世紀末に開発した技術である。電波を送受信する原理は、基本的にはアンテナ素子に時間的に変化する電界を印加した際に、素子中の電子が加速されて動くこととMaxwell方程式で説明が付く。

 ところが、University of Cambridge Department of EngineeringのProfessorであるGehan Amaratunga氏らによれば、誘電体をアンテナ素子として用いる誘電体アンテナで、効率的に電波を送受信できる理由は十分には説明されてこなかったとする。

 誘電体アンテナが、導線や金属片を用いた一般的なアンテナと大きく異なるのは、アンテナ素子には電気が流れない、という点である。誘電体は電界は通す一方で、誘電体材料中の電子は束縛されており大きくは動けない。単純な“電子の加速論”が適用できないのである。

 Amaratunga氏らによると、これまでも、誘電体アンテナが電波を送受信できることを説明する試みは幾つかあった。例えば、(1)誘電体アンテナは磁界ダイポールアンテナのように機能する、(2)電波を送受信するのは誘電体に接続された給電用電極で、誘電体は電波の導波管として機能している、などだ。

 しかし、Amaratunga氏は(1)の磁界ダイポールアンテナ説は、電流の代わりに磁気単極子(モノポール)の流れが実在していなければ説明にならない、(2)の導波管説は、共鳴周波数の存在をうまく説明できない、などと批判する。