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 太陽熱発電で利用する蓄熱システムを活用して、風力“熱”発電を実現しようとする研究が、日本とドイツで進んでいる(前回の記事)。風車の回転力を発熱機によって直接、熱に変換し、その後は太陽熱発電と同じ蓄熱・発電システムを用いる(図1)。

 例えば、太陽熱発電を利用して検討している淡水化プロジェクトなどへの風力熱発電の応用が有効になる。太陽熱発電では定期的に鏡の洗浄が必要になるが、せっかく製造した真水を洗浄に使うのは経済的に引き合わない。風力熱発電であれば、こうした問題が生じない。

図1 風力熱発電の構成(図:国際超電導産業技術研究センター)

電磁補助ブレーキを利用

 回転力を熱に換える発熱機には、トラックなどで使われる電磁補助ブレーキが応用できる。円形の磁石を金属の囲いで覆ったもので、磁石を回転させると金属に渦電流が発生し、金属が発熱する。電磁誘導加熱を利用したものだ。

 実際にドイツVoith社は、トラック向け電磁補助ブレーキを発熱機として風車に組み込んだシステムを開発した。空調や給湯への応用を狙っている。油の攪拌熱を利用することで、最大150℃の温度が得られる。ヒートポンプと違って、投入エネルギー以上の熱量は得られない。安価で堅牢な自動車用の部品を転用できるのは魅力である。ただし高温化するには、新規の設計が必要になる。

 高温対応のトラック向け電磁補助ブレーキが、日本に存在する。新日鉄住金のトラック向け電磁補助ブレーキは、650℃までの実績がある(図2)。既存の太陽熱発電所が使う蓄熱温度560℃の熱循環システムへの応用が可能だ。
 温度の上限は鉄のキュリー温度で決まる。超電導技術を利用すれば、温度上限を撤廃できる。1000℃に達する超電導誘導加熱炉がドイツで稼働している。

図2 650℃にもなるトラック補助ブレーキ (写真:新日鉄住金)

 風力熱発電が優れているのは、故障の少ないダイレクトドライブを安価に実現できる点である。ダイレクトドライブは、ギアなどを介すことなく、回転力を直接、駆動対象に伝達する機構である。故障率が低く、保守コストが抑えられる。ただし風力発電に用いる場合、ダイレクトドライブ式の回転機は、ギア式の回転機に比べて重くなるため、設備コストが4割ほど高価になっていた。
 これに対して風力熱発電で用いるダイレクトドライブ式の回転機は、風力発電に用いるダイレクトドライブ式の回転機の重さの1/10にできる。この結果、設置コストを風力発電のギア式の回転機と同等に抑えられる。

 安価な蓄熱システムと組み合わせれば、従来の風力発電と蓄電池や火力発電と組み合わせた場合よりも、安価で安定なエネルギー源となる。発熱と発電を併用する発電発熱兼用型も可能になる。