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 まったく未来的な、空中浮揚するスケートボードが実現した。まずは、この映像を見てほしい。

 CGではなく実写である。映像にはBGMが入っているのでわからないが、現場ではスケボー独特のゴロゴロと言う滑走音がいっさい聞かれない、不思議な雰囲気の中で撮影が進められたことだろう。

 スケボーが白い蒸気を吐いているのは、中に入っている高温超電導バルクを液体窒素で冷却しているからだ。バルクというのは、コイルや薄膜ではなく、固まりという意味。スケボーの中は液体窒素の沸点である-196 ℃に保たれており、銅酸化物セラミックスからなるバルクが超電導状態に相転移している。

 スケートパークの床下には、永久磁石が敷き詰められている(プールの水面直下にも)。その上を超電導バルクを内蔵したスケボーが通ると、超電導体は永久磁石の磁束を排除しようとして浮き上がる。これは完全反磁性(マイスナー効果)という超電導固有の現象。電磁石などによる磁気反発力を利用した浮上とはまったく異なる原理である。いっさい制御をしなくても一定の距離で安定に静止浮上する。

 さらに、バルクの中には結晶粒界などの不純物相で超電導になっていない部分がある。そこには一部の磁束が侵入し、貫通している。これを磁束のピン止めなどという。この貫通した磁束は浮上したバルクに拘束力として働く。そのために、磁気的な反発力とピン止めの拘束力が重なって、より安定な浮上状態をつくっている。

 以上の説明は、実験の初期を記録した別の映像を見ると理解しやすいかもしれない。

 大きくて立派なスケートパークだが、床下の永久磁石は全面に敷き詰められているわけではない。レールのように1本のルートとして敷設されている。先ほどの磁束のピン止めの効果で、ボードはある程度はレールの上に留まろうとするが、逸脱すると急に浮上が止まり、転ぶ。もし床下全面に磁石を敷き詰めればそんなことはなく、本当に未来のスケートボード場になるのだが、お金がかかりすぎることだろう。

 この映像はトヨタ自動車の高級車ブランド「Lexus」のプロモーション用に制作されたもの。超電導浮上技術は、ドイツDresdenのLeibniz-Institute for Solid State and Materials Researchとそこからスピンオフしたドイツevico GmbHが担当した。
 
 超電導バルクによる浮上実験は、高温超電導が発見された当時から、特に日本の研究者によって熱心に研究された。さんざん応用を探してみたが結局、実用化につながったものは一つもなかった。30年近い年月が経ち、海の向こうでエレガントに進化して復活した。