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 「スマホ向け半導体市場で、中国の新興メーカーが勢いを増している。Spreadtrum Communications(Spreadtrum)社にFuzhou Rockchip Electronics(Rockchip)社、RDA Microelectronics (RDA)社、HiSilicon Technologies(HiSilicon)社…。そしてまだ見知らぬ新たなプレーヤーたちも、これから続々と市場に参入してくる」――。

 日経BP半導体リサーチ(SCR)が2013年4月に東京都内で開催したセミナー「アジアの最新機器分解に見る半導体ビジネスの真実」では、SCRの連載コラム「清水洋治の半導体産業俯瞰」の執筆者であり、半導体メーカーで設計開発やマーケティングに従事する清水洋治氏が講師を務めた。講演タイトルは「設計・開発もアジアシフト」。2012年だけでも500台近くのスマートフォンを分解したと語る清水氏は、最近数年間にアジア地域で発売されたスマートフォンをはじめとする数々の電子機器の分解事例から、勢いを増す中国のファブレス半導体メーカーの動向を紹介した(6月25日開催予定の「Part2」の詳細はこちら)。

 清水氏はまず、1990年代後半~2000年代半ばに日本で発売された携帯電話機(フィーチャーフォン)の分解事例から、搭載された半導体の大半が日本メーカー製だったことを示した。例えば1999年に発売された日本初のCDMA対応機種では、搭載された7個の半導体のうちの6個が日本メーカー製だった(図1)。清水氏によれば、「この風景が2005~2008年に少し変わってきた」。米Qualcomm社製半導体の搭載比率が徐々に高まってきたのだ。2009年ごろには多くの機種で、米国や欧州製の半導体の搭載個数が、日本製の搭載個数を上回るようになった(図2)。加えて、中国や台湾、東南アジアといったアジア地域で発売される携帯電話機には、台湾MediaTek社の半導体が高い比率で採用されるようになる。

図1●日本製チップが主流を占める
図1●日本製チップが主流を占める

図2●数十機種の携帯電話機における主要半導体の供給元
図2●数十機種の携帯電話機における主要半導体の供給元

 Qualcomm社やMediaTek社が共通して採ったのが、ターンキー型の事業モデルである。携帯電話機を構成する主要な半導体をまとめて提供するという手法だ(図3)。清水氏は日本や中国、香港、ベトナムなどで購入した携帯電話機の分解事例から、両社のターンキー・モデルがいかに幅広く受け入れられたかを示した。

図3●MediaTek社のターンキー・モデルの事例
図3●MediaTek社のターンキー・モデルの事例

 これに続いて起きたのが、中国のファブレス半導体メーカーの台頭であるという。清水氏がその代表格に挙げたのが、Spreadtrum社だ。2000年代末以降にアジア地域で発売された携帯電話機の多くに、同社の半導体が見られるようになった。同社もターンキー・モデルを採用しているが、そこには三つの基本戦略がうかがえるという。すなわち、「買えるものは買う」(CPUコアなど)、「使えるものは使う」(EDAツールなど)、「頼めるものは頼む」(ファウンドリーなど)である(図4)。こうした手法により、Spreadtrum社は「“2年の遅れなど一夜で追いつける”という意気込みで、先行する半導体メーカーとの実力差を急速に縮めた」(清水氏)。実際、同社は2010年に40nm世代のベースバンドLSIの量産で業界の先陣を切った。Spreadtrum社の登場により、2010年には「中国製半導体だけでスマートフォンを作れるようになった」と清水氏は指摘する。

図4●Spreadtrum社の事業モデル
図4●Spreadtrum社の事業モデル

 Spreadtrum社に続く新興勢力として、2010年を境に台頭してきたのがRockchip社とRDA社である。特にRDA社は目下、最も成長著しい半導体メーカーの一つだという。Rockchip社とRDA社は「一つの企業に閉じない形でのターンキー・モデルを確立した」(清水氏)。すなわち、2社の半導体を組み合わせればスマートフォンなどの端末を製造できる、というソリューションを構築した。この結果、両社の半導体は多くの端末において「ほぼ100%、隣り合って搭載されている。まさに“黄金の組み合わせ”だ」(清水氏)。両社のチップは、清水氏が日本の小売店「ドン・キホーテ」で購入したマルチメディア・プレーヤーにも搭載されていた(図5)。ドン・キホーテという極めて身近な存在にまで中国製半導体が浸透してきていること。この事実は現在のエレクトロニクス市場の状況を読み解く一つの鍵だ、と清水氏は説く。

図5●日本で販売されているメディア・プレーヤーの中身
図5●日本で販売されているメディア・プレーヤーの中身

 Rockchip社の半導体は、性能に関しても欧米メーカーの製品に引けをとらないという。同社は2012年にCPUコア2個とGPUコア4個を搭載した40nm世代のアプリケーション・プロセサ「RK3066」を市場投入したが、その性能は「Qualcomm社やIntel社のチップと比べてもそん色がない」(清水氏)。