省エネの切り札として期待される次世代パワー半導体材料のSiCとGaN。両材料を用いたパワー素子の利用環境が整いつつある。SiC製ダイオードは、鉄道向けモータ用インバータ装置や、家庭用のエアコンなどへ採用され始めた。一方GaN系パワー素子も、製品化が徐々に始まっている。
コンバータやインバータといった電力変換器で、その電力制御に利用する「パワー半導体」。そのパワー半導体材料に次世代の波が押し寄せている。SiC(シリコンカーバイド、炭化珪素)やGaN(ガリウムナイトライド、窒化ガリウム)である。いずれも現行材料であるS(i シリコン、珪素)の物理特性を凌駕する、「省エネの切り札」として電力会社や自動車メーカー、電機メーカーなどが大きな期待を寄せている。SiをGaNやSiCといった化合物半導体に置き換えることで、Si製パワー半導体素子(以下、パワー素子)で実現できない大幅な効率向上や小型化が見込めるためである。
現在さまざまな分野で、Si製のダイオード、MOSFETやIGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)といったトランジスタがパワー素子として利用されている。例えば、送電システムや電車、ハイブリッド車、工場内の生産設備、太陽光発電システムで利用するパワー・コンディショナー、エアコンを始めとする白物家電、サーバー機やパソコンなどの分野である。こうした分野で利用されるパワー素子の材料として、Siに替わってGaNやSiCが利用できるようになる(図1)。
例えばSiCは、鉄道車両向けモータ用インバータ装置や、エアコンなどへの採用が既に始まっている(図2)。