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 2013年6月28日に日経エレクトロニクスが主催したセミナー「NE先端テクノロジーフォーラム 次世代パワー半導体のインパクト」(協賛:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン)から、産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター 研究センター長を務める奥村元氏の講演を、日経BP半導体リサーチがまとめた。今回はその第3回(第1回第2回)。
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 ここからは、SiCなどの次世代パワー半導体を用いたデバイス技術について紹介していこう。この新しい材料でも、Siと同様にデバイス製造はインゴットを作ってウエハーを作製するところから始まる。

 2013年現在、SiCでは6インチ径までのウエハーが作られている(図1)。この口径が実現してからまだ1~2年しかたっていない。現在市販されているSiCウエハーの主流は4インチ品であり、結晶欠陥や転位密度は1万cm-2程度である。これに対して、最近開発された6インチ・ウエハーでは、転位密度で数千cm-2という高い品質が実現されている。

図1●SiCウエハー・デバイス技術
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 このグレードのSiCウエハーを用いてデバイスも試作されており、ドレイン電流が数十A、オン抵抗が2mΩを切るものが実証されている(図1の右側)。これらはいずれも現在進行中のNEDOプロジェクトの成果であり、耐圧3.3kVのMOSFETのスイッチング動作も確認されている。この他、内閣府の「FIRSTプログラム」では、耐圧が10kVを超えるSiC-IGBT(insulated gate bipolar transistor)が試作されており、24mΩというオン抵抗が得られている。

 図2は、各種のパワー・デバイスを耐圧の点からまとめたものである。ダイオードであれ、トランジスタであれ、Siではせいぜい数千Vぐらいまでの用途に限定されるのに対し、ワイドギャップ半導体ではほぼ10倍の耐圧まで使えるようになる。より高電圧のアプリケーションでは、SiCの出番というわけである。

図2●パワー・デバイスの電圧領域
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 各種の高出力パワー・デバイスの構造を図3にまとめた。SiではIGBTが主流であるのに対し、SiCではMOSFETまたはJFET(junction FET)が開発のターゲットになっている。HFET(heterojunction FET)は2次元電子ガスを使うタイプで、主にGaNで研究が進んでいる。他の三つが縦方向に電流を流すのに対し、HFETは横方向に電流を流す。パワー・デバイスとして大きな電流容量を確保する観点からは、横型に比べて縦型が有利である。

図3●高出力電子デバイスの構造
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 別の観点に基づく分け方では、IGBTのみがホール(正孔)注入による伝導度変調を利用するバイポーラ素子であり、他の三つは電流のキャリアとしてもっぱら電子を使うユニポーラ素子である。IGBTはオフ状態にするときにホールを引き抜く必要があるため、動作速度の点では若干不利だ。