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 論理エミュレータ(logic emulator)は,解析対象の論理LSIをFPGAなどにマッピングして,その回路のプロトタイプを実現する装置。多くのEDAツールのようなソフトウエアではなく,ハードウエア(装置)である。

ハード・ソフト協調検証にも使える

 論理エミュレータの用途は大きく2つに分かれる。1つは論理シミュレーション。もう1つは,論理LSIのインサーキット・エミュレーションである。まず論理シミュレータとしてみてみよう。

 論理エミュレータは非常に高速な論理シミュレータとして働く。論理エミュレータ上に展開した論理回路は1MHz~数MHz前後で動作する。このため,ワークステーション上で稼働するソフトウエアの論理シミュレータと比較して4桁~5桁も高速である。またハードウエア・アクセラレータと比較しても2桁~3桁速い。

 もう一つの用途,インサーキット・エミュレーションでは,次のように使う。すなわち,論理エミュレータの外部入出力端子であるポッド(またはターゲットインタフェースモジュール)を,開発中のシステム(プリント回路基板)のソケットに取り付ける。これで,論理LSIのサンプル・チップを待たずに,ソフトウエアを含めたシステム全体の検証が可能になる。つまり,論理エミュレータは,この意味ではハードウエア・ソフトウエア協調検証ツールとして働く。また何か問題が発生したときにサンプル・チップでは難しい内部ノードの観察や設計変更が,簡単にできる点も魅力である。

高価にもかかわらず広く普及

 論理エミュレータは1990年ころに市場に登場した。それ以来,非常に高価であることや,エミュレーションを実行するまでの準備に大変な労力を要するなどのデメリットがあるにもかかわらず,機器(システム)メーカーや半導体メーカーにかなり普及している。半導体メーカーでは,マイクロプロセサや通信用ASSP(application specific standard product),画像処理用ASSPの開発でよく使われており,成功事例も多い。

 しかし,改善すべき問題点もまだまだ少なくない。例えば,回路構成と規模の点から論理エミュレータ上に展開できない場合もある。また,インサーキット・エミュレーション時には,開発中のシステムの実動作速度と論理エミュレータの動作速度の差を調整する機構が必要になる。

 論理エミュレータは,エミュレータ本体のハードウエアと,ワークステーション上で動くユーティリティ・ソフトウエアからなる。本体は,解析対象の論理回路を展開するためのボード,外部のプリント回路基板と接続するためのポッド(またはターゲット・インタフェース・モジュール),デジタル信号発生器,ロジック・アナライザなどから成る。論理展開用のボードには,書き換え可能な論理素子(FPGAなど)とスイッチが並んでいる。

 一方,ユーティリティ・ソフトウエアは,解析対象回路のネットリストを複数の論理展開用ボードに自動分割し,各ボード内のFPGAへの割り付けを行ない,FPGA間の配線経路を見つける。この際,タイミングやFPGAの利用率,解析対象回路の内部ノードの可観測性などを考慮する。

 最近はユーティリティ・ソフトウエアのなかに,簡単な論理合成ツールを内蔵し,RTL記述を入力できるようにした製品も出てきた。解析対象の回路構成をあらかじめ論理展開用ボードの仕様にあわせて設計して高速動作を狙った製品も出てきている。


(99. 9. 6更新)

このEDA用語辞典は,日経エレクトロニクス,1996年10月14日号,no.673に掲載した「EDAツール辞典(NEC著)」を改訂・増補したものです。