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用語解説

 正式名はポリメチルメタクリレート(Polymethyl Methacrylate: PMMA)であり,メタクリル酸メチルの重合体(CH2C-CH3-COOCH3)を主成分とする高分子材料である。短縮して「アクリル樹脂」と呼ばれることもある。樹脂の中では最も透明度が高く,耐候性に優れるのが最大の特徴で,熱的特性,機械的強度,成型加工性などのバランスが良いことから電子機器の光学用途,自動車部品,家電の照明部品,雑貨,建材などに広く使われている。材料としては,成形材料と板の二種に大別される。

 そのうち成形材料は,射出成形,押し出し成形などの溶融成形向けの材料である。成形材料の製法としては,(1)懸濁重合法(反応釜の中に水とモノマー類を入れ,重合を行い,乾燥後押出機でペレットとする),(2)塊状重合法(溶媒を使わずにモノマー類そのものを溶融状態で重合させてそのまま押し出し,ペレットとする),(3)溶液重合法(水の代わりに溶剤を使用して重合して揮発成分を除去した後,押し出してペレットとする)の3種がある。

 メタクリル樹脂の成形材料は,自動車のテールランプカバーや照明カバー,液晶ディスプレイの導光板の需要が伸びている。特に,ノート・パソコンの液晶ディスプレイには軽量化のために,メタクリル樹脂の射出成形グレードが採用されている。

 一方,メタクリル樹脂板は,モノマーを出発原料として,重合と同時に板状の材料とする。製法としては,(1)セルキャスト法(2枚のガラス板の間にモノマーを封入し,その中で塊状重合を行い,重合固化させて板とする),(2)連続キャスト法(連続した鏡面ステンレスのベルトを上下に2枚並べ,ベルト間にモノマーを流して塊状重合を行い板とする),(3)押出法(ポリマーを押出機により加熱溶融後,「Tダイ」と呼ばれる吐出口からシート状で押し出し,冷却固化して板とする)の3種がある。

 板の需要も液晶ディスプレイの導光板の需要が堅調である。ノート・パソコンには前述のように軽量化の面から射出成形材料が使われるが,モニター向けや近年急速に普及しつつある液晶テレビ向けの導光板では,メタクリル樹脂板に高輝度になるような加工を施して採用されることが多い。プロジェクションテレビの光学部品にもメタクリル樹脂板が多用されいている。

供給・開発状況
2005/12/09

《供給動向》アジア諸国でプラント増設相次ぐ

 石油化学工業協会の調べによると,メタクリル樹脂の需要は,液晶ディスプレイの導光板と自動車向けの用途が好調で,年率7%近い伸びを続けている。ポリマーの出荷量は,2003年には22万8100tで前年比7%,2004年は24万2600t,2005年は24万7600tになると予想されている。

 液晶ディスプレイおよびバックライトユニットの生産拠点が韓国,台湾,中国で新設する動きが活発化していることから,アジア諸国でメタクリル樹脂の原料であるモノマー,成形材料,板の生産プラント新設が相次いでいる。

 例えば住友化学の関連会社である韓国LG MMA Corp.は,液晶パネル用バックライトの導光板向けにメタクリル樹脂のモノマーの新製造設備(7万6000t/年)の建設に着手した。商業運転の開始は2008年4月を予定している。 今回の新製造設備の稼働によって,LG MMAのモノマーの生産能力は,既存の第1,第2プラントと合わせて,合計17万6000トンとなる。住友化学グループとしては,今回の新設と2008年第1四半期の商業運転開始を予定しているシンガポールでの増強計画を合わせて,日本,シンガポール,韓国の合計で48万9000トンを供給できる体制を整え,アジアにおける最大規模のメーカーとなる。

 また三菱レイヨンは,中国・南通にメタクリル樹脂成形材料の年産4万tの設備を2003年12月から稼動したが,さらに同社のグループ会社で,中国江蘇省に拠点を置く三菱麗陽高分子材料が,アクリル系塗料用樹脂の商業生産を2005年6月1日に,アクリル樹脂板の商業生産を同年7月1日に,それぞれ開始した。年間の生産量は,アクリル樹脂板が2万t,アクリル系塗料用樹脂が3500tである。  

《開発状況》導光板の各種部材を一体化してコストダウン

 用途面で最も動きがあるのが,液晶ディスプレイの導光板である。ノートパソコンの場合,軽量化の要求が強いために,導光板の端面にランプを配置するサイドライト式のバックライトが採用されることが多い。その場合,導光板は端面から徐々に厚みが薄くなるようにし,表面には微細な凹凸やプリズム形状をメタクリル成形材料の射出成形で作り込む。

 デスクトップパソコンの液晶モニターでは,メタクリル樹脂板が使われることが多い。板状に切断したものの両端にランプを配置し,背面には斑点状のドットパターンをスクリーン印刷して作り込む。

 液晶テレビでは,高輝度が要求されるために,数cm間隔で複数のランプを並べてその上に拡散板を配置する直下型構造のバックライトユニットが採用されることが多い。その拡散板にもメタクリル樹脂板が使われている。

 近年大型テレビでは部品・材料コストの占める割合が70%を超えたことから,コストダウンの要求が極めて強くなってきている。このために,バックライトにも構成部材を削減することが求められ,新構造のデバイスを開発する動きが活発化している。

 バックライトユニットには,導光板から来た光を多方面に広げる拡散板や正面方向に集光するためのプリズム・シートを積層して使われる。材料はメタクリル樹脂板が主流である。これらの各種シートを一体化する検討が行われている。

 例えば,クラレはメタクリル樹脂の表面にU字型のマイクロレンズを付け,裏面に拡散粒子の入ったフィルムを塗布した複合シートを開発することにより,拡散シートとプリズムシートの二つの機能を持たせることに成功した(『日経FPD2006』戦略編,p.170~「材料革命」参照)。

 また,オムロンは,「FPD International 2005」フォーラムで講演し,導光板の中にプリズムを形成し,LEDを中心にそのプリズムを同心円状に配置するバックライトの新構造を開発したと発表した。その結果,指向性が高まり,液晶パネルのバックライトとして利用できる光量を増やしている。プリズム・シートが不要になり,低コスト化を図れたという。

 このほか,導光板と拡散板・プリズムシートを一体化する新構造は各社で検討が進めれれており,バックライトユニットのコストダウンは急速に進むと見られる。

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(Tech-On!,2004年9月22日)