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 家電分野では2006年7月施行のRoHS指令,自動車分野では「2008年以降使用禁止」とするJAMA(日本自動車工業会)の自主規制などにより,ここ数年内に6価クロムを全廃しなければならない。これをにらみつつ,家電メーカーや自動車メーカー各社は前倒しで対策を進めている。

 6価クロムは,亜鉛めっき鋼板などに耐食性や塗料密着性,耐指紋性などを付与するための表面処理「6価クロメート処理」に利用される。同処理を施した主な工業製品は,鋼板とねじ。このうち,鋼板については,有機皮膜などを利用し6価クロムを全く含まない皮膜を形成,従来の6価クロメート処理と同等以上の性能を持つ,いわゆる「クロムフリー鋼板」への代替が進んでいる。

 ねじに関しては,6価クロムの代わりに3価クロムを使い「3価クロム化成皮膜」を形成する対策が進行中だ。ただし,この対策が本格化するのは2004年後半から2005年にかけて。当初の計画より半年から1年ほどの遅れになるが,理由については分野により異なる。家電や精密機器分野では外観品質の問題が大きかった。特に,ツヤのあるきれいな黒色を実現するのが難しかった。一方,自動車分野では耐食性の問題。とりわけ,傷付いた部分を自然に修復して耐食性の向上に貢献する「自己修復」という機能の確保が困難だった。

 加えて,従来の6価クロメート処理を3価クロム化成皮膜に置き換える際,新たな問題が浮上した。その最たる例が,ねじの表面状態。具体的には,摩擦係数の変化だった。

 3価クロム化成皮膜を施したねじの摩擦係数は,6価クロメート処理したねじのそれより高い。それを従来と同じトルクで締め付けた場合,締結体に発生する軸力は低くなる。すると,ねじは緩んだり,完全に締め付け終わらない「ねじ浮き」が発生したりする。特に,各部位ごとに締め付けトルクを定め,徹底した締め付け管理を実施してきた自動車分野では,ねじの締め付けが人の命に関係してくる。結局,自動車メーカーはねじメーカーや処理液メーカーに対し,従来と摩擦係数が変わらないこと,あるいは具体的な数値を提示しその範囲に摩擦係数が収まることを要求し,この難題を解決しようとしている。

 新たな問題はこれだけではない。排水処理を適正に実施しないと,排水中の3価クロムが6価クロムに変わることがあるようだ。さらに真偽のほどは定かではないが,3価クロム化成皮膜自体から6価クロムが検出されるという指摘もある。 こうしたことから,将来的には,完全クロムフリーの表面処理が望まれるが,それが量産レベルで実用化できるまでにはまだ数年かかりそうだ。

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