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Quality Function Deployment

 新製品開発の際,十分品質の高い製品を製造するためには,設計段階から品質に配慮しておくべきと考えるのは自然なことだ。しかし品質を高めるために,具体的に設計段階で何をすべきかは必ずしも自明ではない。品質機能展開は表の行に目的とする品質(要求品質)を,列に直接管理可能な要素(品質要素)を記入した二元表(品質要求展開表)を用い,互いの関係付けから重要性の高い品質要素は何か(=設計段階で何をコントロールすべきか)を明らかにする手法。1960年代に,赤尾洋二,水野滋の両氏が開発した。

 当時の自動車業界は,次々と新製品を開発して急成長している最中だった。品質に関する取り組み(TQC:Total Quality Control)も盛んになっていた。しかしQC活動を実施していたのは製造現場で,新製品の設計が確定したあとのこと。設計段階から品質を向上させるよう考えておくのが良いことは分かっていても,方法論がなかった。QFDはこのような背景のもとで日本で生まれた手法であり,Quality Function Deploymentという英文は「品質機能展開」という日本語の直訳に当たる。

 二元表を初めて用いたのはブリヂストンで,1966年のこと(Y. Akao, “QFD:Past, Present, and Future”,Proceedings of International Symposium on QFD ’97.)。タイヤの品質と製造プロセスの管理項目とを結びつけるものだった。その後三菱重工業の神戸造船所で,顧客の要求と設計品質とを関連付けるのに二元表を用いた(同)。これらの活動は品質展開(QD)と呼ばれた。

 一方ほぼ同時期に,製品の機能定義と分析に用いる価値工学(Value Engineering)をベースに,「狭義のQFD」の概念が生まれた。狭義のQFDは「品質を形成する職能ないし業務を,系統的にステップ別に細部に展開していくこと」(赤尾洋二,吉澤正監修,新藤久和編「実践的QFDの活用」日科技連出版社)と定義されている。狭義のQFDに品質展開などの考え方を加えたものが「広義のQFD」になる。

 1970年代半ばになると,QFDはさまざまな目的への応用が考えられた。例えば「競合製品とのベンチマーク,市場要求の分析,品質関連情報の後工程への伝達,設計意図の製造への展開,管理ポイントの明確化,初期不良の削減,設計変更の削減,開発期間の短縮,開発コストの削減,市場シェアの確保」(“QFD:Past, Present, and Future”)などが挙げられる。米国と欧州でのQFDの導入は1980年代になって始まった。

 トヨタ自動車もQFDを広く採用した。「関連会社の日野自動車,トヨタ車体で取り組みが始まり,1970年代の終わりにはグループ全体に広がった」(同)という。

 ばくぜんとした問題を具体的で管理可能な項目に還元する手段としてQFDは有効であり,他の手法との組み合わせも考えられる。例えば要求品質を実現するための設計値を具体的に設定するには,実験計画法の発展形であるタグチメソッドを組み合わせたり,多くの定量データから要素を抽出する多変量解析の手法を組み合わせたりできる。またナレッジマネジメントと組み合わせ,暗黙知を形式知に変換する過程にQFDを用いることなども考えられている。いずれもQFDと他の手法を互いに補うものと期待されている。

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