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用語解説

 球状の形をした半導体のこと。直径が1mm程度の球状Si(シリコン)が代表である。通常のSi半導体は板状だが,溶融したSiを滴下することにより,表面張力で球状になり,落下中に固まって球状Siとなる。球状Siの上に半導体技術を使ってIC(集積回路)を作りこんだり,太陽電池を形成する検討が進んでいる。

球状Si太陽電池に脚光

 中でも有望視されているのが球状Si太陽電池である。既存の板状Si基板を使う太陽電池と比べ,切断や研磨の工程がないために高価なSi材料のムダが少なく,セル構造の工夫により折り曲げ可能な電池となるなどの利点があることから,参入が相次いでいる。

 背景には,太陽電池の需要が拡大しており,Si材料の不足と価格上昇が問題になっている事情がある。球状Siは現在主流の多結晶Siに比べSiの使用量を減らすことができ,コストダウンの可能性があることから注目が集まっているのである。

反射板で光を集光して効率アップ

 球状Si太陽電池を最初に開発したのは米Texas Instruments社で,1980年代に遡る。しかし同社は,板状の太陽電池に比べて発電効率が低いという課題を解決できずに,開発を断念した経緯があった。というのは,球状Siは周辺部で光の反射ロスがあるために光の当たらない部分があり,細密充填しても面積効率が悪く,隣接する球状Siによって光が遮られる難問があったためだ。

 その後各社は,こうした発電効率の悪さを解決するセル構造を考案,最近多結晶Siに迫る効率が出てきたことから再び開発が活発化し始めたのである。例えば,反射板を使って光を集めることで出力を向上させる,といった新構造のセルが開発されている。

ICやMEMSを作り込む

 球状Si表面にICやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を作り込む検討も進んでいる。従来の平面状シリコンと比べて,表面積が大きいことから集積度が約3倍向上すると言われている。

 用途としては,まずはセンサなどが検討されているが,将来的には情報処理回路,無線通信回路,電源などを作りこみ,膨大な数の素子を無線で接続してネットワーク・コンピューティングを実現しようという目標が掲げられている。

供給・開発状況
2006/03/03

反射板中に球状Siを入れて集光

【図】集光型球状Si太陽電池のセル。手で簡単に折り曲げられる
【図】集光型球状Si太陽電池のセル。手で簡単に折り曲げられる(クリックで拡大表示)

 太陽電池モジュール・メーカーのフジプレアムと球状Si太陽電池の研究開発ベンチャーであるクリーンベンチャー21は共同で,集光型球状Si太陽電池の実用化検討を進めている。六角形のお椀のような形状の反射板の中に球状Siを入れ,反射板を利用して光を球状Siに集中させる。球状Siにすることで,従来の多結晶Siに比べて,Siの使用量を1/5に減らすことができるという。反射板はアルミニウム合金箔と絶縁シートで構成し,手で簡単に折り曲げることも可能だ(図) 。

 製法としては,(1)溶融したSiを滴下すると表面張力で球状のp型Siになり落下中に固化,(2)ウエット・エッチングで真球状に整形,(3)P(リン)を気相拡散させることによりn型層を形成,(4)研磨でP型層を露出,電極形成後に反射板に実装する,(5)球状Siを複数並べて太陽電池セルを形成---といったプロセスである。

 こうして作製したセルの変換効率は11.7%であり,従来型の多結晶Si太陽電池の13%強に比べるとやや低いレベルである。このため同社らは,2007年4月には多結晶Si太陽電池と同等の効率まで上げる考えだ。さらに,球状Siの結晶化プロセスの最適化により結晶欠陥を低減することや,球状Si内の不純物濃度分布を工夫することなどによって,2010年~2011年には変換効率16%を目指したいという。

500億円規模のビジネスに拡大目指す

 フジプレアムとクリーンベンチャー21による集光型球状Si太陽電池セルの量産化の計画としては,まず2006年4月に生産能力250kW/月ののパイロット生産ラインを稼働。続いて,2006年中に量産ラインの建設計画を決定し,2007年4月に本格稼働させる予定だ。量産ラインの生産能力は1MW/月であり,2008年度に3MW/月へ増強する。同時に太陽電池モジュールの新工場を稼働させ,セルからモジュールまでの一貫生産を行う考えである。

 中長期的には,セル工場とモジュール工場の両方について,2009年度と2010年度のそれぞれで3MW/月ずつの設備投資を行い,2010年度には月産10MW,年産では120MWの生産規模に拡大する計画を持っている。これにより,売上500億円規模のビジネスとする考えである。なお,総投資額は約105億円を見込んでいる。

京セラも球状Si太陽電池の開発にメド

 京セラも,「Siの使用量を1/5に減らすことができる」とする球状Si太陽電池の開発にメドをつけたことを明らかにした。Siを滴下して表面張力を利用して球状にしている基本原理は同じだが,具体的なセルの構造や変換効率などの詳細は明らかにしていない。2006年度中の出荷を目指して量産技術の確立を進めるとしており,参入企業が増えることで開発競争が激化する様相を呈してきた。

ニュース・関連リンク

薄膜Si,薄膜化合物,球状Siが量産ラインで低コスト化を競う

(日経マイクロデバイス2006年3月号)

太陽電池を板状から球状へ Si使用量が1/5に--反射板で光を集めて効率向上

(日経エレクトロニクス2006年1月2日号)

多結晶Si原料の供給不足と価格高騰を打破,集光型球状Si太陽電池を事業化

(Tech-On!,2005年12月8日)

京セラ,Si使用量を1/5に減らす太陽電池にメド

(Tech-On!,2005年11月25日)

粒状半導体でネットワーク・コンピューティングを実現

(Tech-On!,2004年3月30日)

山武が球面半導体の米BALLに増資,無線温度センサーの開発を加速

(Tech-On!,2001年4月18日)

山武,「球面半導体」実用化第一弾の開発コンセプトを発表

(Tech-On!,2000年6月2日)