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orthogonal frequency division multiplex

 直交周波数分割多重。中心周波数の異なる複数の搬送波を利用して,シンボルを並列送信するFDM(周波数分割多重)の1種。隣り合う搬送波の帯域が重なり合うほど近接させても干渉することがないように,互いに「直交」させて送信することで,周波数利用効率を高めた。送信するデータを分割する利点は,1つの搬送波当たりのシンボル伝送速度を抑えられること。ここでいうシンボルとは,1回の変調で送信する1ビットあるいは複数ビットのデータである。例えば,10個の搬送波に分割すれば,1波当たりのシンボル伝送速度を1/10にできる。それだけ余裕ができ,本来の信号より遅れて到着する反射波によるマルチパス干渉などに強くなる。

 OFDMでは,このマルチパス干渉による妨害をさらに抑えるために,ガード・インターバル(GI)を設定する。これを導入すると,反射波によって波形が歪む部分は無視し,平坦な所だけで復調できる。実際に復調を実行する区間が有効シンボル長(Ts′)で,実行しない区間がガード・インターバルである。

 OFDMの各種パラメータを決める際に決め手になるのが,このGIの長さである。例えば,10Mシンボル/秒の伝送速度で,50m程度の距離の通信を行う場合を想定する。ここでは,反射波が受信地点に到達するまでにたどる距離を,最大350mと仮定する。この条件では,まずガード・インターバルの長さが決まる。送信波と反射波の到達距離差は350m-50mで最大300mである。これを時間に直したのがガード・インターバルで10-6秒(1μs)となる。次に有効シンボル長を決める。ガード・インターバルに対して有効シンボル長(Ts′)が短いと,無駄が多くなり実効データ伝送速度が上がらない。逆にTs′を長くすると,シンボル長(Ts)も長くなり,結果的に搬送波の数が増えてしまう。FFTの演算量は,搬送波数に比例して増えるので,受信側のハードウエア規模が大きくなるという弊害が生じる。ここでは一例として,Ts′はGIの4倍となる4μsとする。

 こうしてシンボル長が決まると,必要な搬送波の数と,搬送波の間隔(Δf)が決まる。シンボル長(Ts=Ts′+GI)が5μsなので,1つの搬送波の伝送速度は,200kシンボル/秒である。10Mシンボル/秒を伝送するには,10M÷200kで50個の搬送波が必要になる。搬送波の間隔は,1/Tsとなるので,1/5μs,つまり250kHzである。従って50個の搬送波を送信するために必要な全帯域幅は50×250kHzで12.5MHzとなる。

 この例では,無線LANのような使い方を想定して,遅延時間を短く設定した。例えば,地上波を使う放送のように広域の伝送を想定すると,反射波の遅延時間がもっと長くなる。所望の信号に対して,到達距離差が30kmの反射波まで対策が必要な場合を考えてみる。するとガード・インターバルは100倍の100μsにする必要がある。有効シンボル長も100倍にしないと伝送効率が一気に低下するので,結果としてはシンボル長が100倍,搬送波の数も100倍の5000本となる。

 実際にOFDMを利用する場合は,こうしたパラメータはさらに最適化する必要がある。例えばOFDMの変復調回路の鍵を握るFFT変換や逆FFTを効率良く実行するために,FFTのポイント数が2nになるようにする。