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用語解説

 材料中のC(炭素),P(リン),S(硫黄)などの不純物元素を10ppm以下のレベルまで低減して,純度99.999%以上まで上げた純鉄のこと。

 超高純度化することによって従来では考えられない特性を示す。第一に,酸に対する耐食性が通常の鉄の10倍以上に高くなる。例えば,通常の鉄が塩酸中で激しく反応するのに対し,超高純度鉄の場合泡が少し出る程度である。第二に,高い可塑性を示す。降伏応力が市販純鉄の1/8で,液体ヘリウム温度(-268.95℃)でも可塑性が失われない。

Cr添加により強度・耐食性を向上

 この超高純度鉄に,強度や耐食性を高めるCr(クロム)などの元素を添加することによって,高温強度や耐食性,靱性など優れた特性を持つ合金を製造できる可能性があり,合金化の検討が活発化している。こうした特性を活かして,船舶用のスクリューやタービンに使う検討が始まっている。

 一方で,低コスト化技術や高純度化による高い特性を劣化させないような加工技術の開発も進んでおり,発電設備の配管類などへの適用が期待されている。

供給・開発状況
2006/03/17

超高真空中で電解鉄を溶解

 超高純度鉄の開発の草分けは東北大学金属材料研究所客員教授の安彦兼次氏らのグループである。同グループが最初の超高純度鉄の開発に成功したのは1999年のこと。超高真空中で電解鉄(塩酸水溶液を電気分解して陰極に析出させた鉄のこと)を溶解することにより,不純物元素を減らして純度99.9989%の超高純度鉄の開発に成功した。そのために超高真空に対応可能なコールド・クルーシブル(水冷銅つるぼ)を開発した。

 その後同グループはさらに純度を高めるために,電子銃で局所的に熱しながらその加熱ポイントを動かしていくことで不純物を片側に集めて高純度化する「浮遊帯溶融精製」を実現する装置の開発を進め,これを組み合わせることによって,純度99.9999%(6N)の高純度鉄の開発にも成功している。

 鉄を6Nまで超高純度化すると,4.2Kの液体ヘリウムの中でも脆性破壊することなく可塑性を示す。また,塩酸や王水に対する耐蝕性は,工業用純鉄の10~100倍も高くなる。

Cr量を50%まで添加可能に

【図1】エレクセルが開発した色素増感型太陽電池
【図】Fe-50%Cr合金製タービンブレードの試作例

 またの安彦氏らのグループは,この超高純度鉄にCr(クロム)を添加して,強度や耐食性を高める検討を進めており,Cr量が50%のFe-Cr合金の開発に成功した。これまでCr量の高い合金はほとんど実用化されていないのが現状で,現在実用化されているFe-Cr系ステンレス鋼中のCr量の上限は30%ほどである。

  Cr量を50%に上げたFe-Cr合金は,室温から1200℃で高い強度と優れた可塑性を示し,耐食性性も極めて高いという。このような特性から想定される応用例として,船舶用スクリューやタービンブレード(図)などを検討している。

低コスト化,加工性付与の検討始まる

 NEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)は2005年度から「超高純度金属材料の産業化研究」プロジェクトをスタートしている。目的は不純物の総量を数十ppmレベルの超高純度金属を低コストで製造する技術を開発すること。

  低コスト化を実現するために超高純度鉄の原料である電解鉄について,純度は落ちるものの低価格なものを使う検討を進めている。さらに,高純度化によって得られた優れた特性を劣化させないような加工方法についても開発する計画である。

  こうした低コストで加工性の高い超高純度材料を開発することにより,従来よりも耐食性,耐圧性が高まることから,腐食や応力腐食割れが問題となる発電設備などの配管類などに使えるのはないかと見られている。

ニュース・関連リンク

特集「常識を超えろ(5)鉄は錆びる」

(日経ものづくり2006年3月号)

大同特殊鋼と日立金属,特殊鋼分野で業務提携

(Tech-On!,2006年3月6日)

三菱重工業など,超高純度金属の研究組合を設立へ

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(Tech-On!,2004年10月5日)