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用語解説

 Si(シリコン)ベースの液体材料。真空技術を使わずに,インクジェットやスピンコートといった塗布法による成膜プロセスが適用できることから,大幅に低コストな電子デバイスを実現できる可能性がある。

 Siベースの液体材料はこれまで,実現が難しいとされていたが,2006年5月にセイコーエプソンとJSRが開発に成功したと発表した。Si系の高分子材料を合成して溶媒に可溶にし,高純度化した後に,スピンコートまたはインクジェットで成膜する。これを加熱して固体のアモルファスSiや多結晶Siを得ることができた。

「マイクロ液体プロセス」で低コスト化

 電子デバイスを液体材料で作成しようという検討はこれまでも進んでおり,各種の有機材料や有機Agなどの金属が既に液体化され,それを使った電子デバイスが開発されている。有機材料では,いずれもインクジェットで形成した,液晶ディスプレイ向けカラー・フィルタ,有機EL,有機TFTである。液体Agでは,プラズマ・ディスプレイ向けのバス配信やフレキシブル多層基板,TFT用配線などが試作された。これに加えて,半導体材料の主流であるSi系の液体化が可能になったことで,液体材料を使った電子デバイスの実現可能性が一気に高まってきた。

 こうしたインクジェットを使った製造技術は「マイクロ液体プロセス」と呼ばれており,従来よりも桁違いのコストダウンを可能にする。インクジェットにより,必要な部分のみに必要な量だけ材料を供給するため,材料コストを大幅に抑えられるからである。これに対して,これまでの真空技術やリソグラフィーを使うプロセスは,全面に成膜後にリソグラフィーとエッチングによって取り除いてパターニングしていくために材料の利用効率は1%以下と極めて小さかった。

供給・開発状況

2006/08/11

セイコーエプソン・JSR,塗布法による
多結晶Si-TFTの開発に成功

 セイコーエプソンとJSRは,液体Si材料を使った薄膜をスピンコート法によって形成し,これを利用した多結晶Si-TFTを試作した。電子移動度は108cm2/Vsと高く,従来のCVD法で形成したTFTと同等の性能を実現した。有機ELパネルの駆動TFTなど向けに,5~6年以内の実用化を目指すとしている。

 なお同社らは,インクジェット方式による塗布で形成した多結晶Si-TFTも試作したが,この場合電子移動度は6.5cm2/Vsであった。インクジェット方式で形成するTFTとしては,Siではなく有機半導体を使う手法もあるが,電子移動度を高めるのが難しいという問題があった。液体Siを使うことによって改善したものの,まだ低いレベルにあるため,同社らは今後インクジェット塗布技術を改良してさらに電子移動度を高めていく考えである。

未重合低分子を残すことで溶媒可能に

 Si系液体材料の開発にあたっては,いかに溶媒に可溶にするかがポイントになる。同社らは,有機溶媒に可溶な低分子であるシクロペンタシラン(CPS)を出発原料とした。低分子のままだとインクジェット可能な材料にはならないが,これに紫外線を照射すると高分子であるポリシランとなる。ポリシランは有機溶媒に溶けないために,一部CPSを未重合のまま残すと溶媒に可能な液体材料とすることができた。

 TFTの作製にあたっては,この液体材料をスピン・コートやインクジェット法でチャネル部を作製した。成膜後に加熱することにより,不要部が水素ガスなどの形で飛んで,アモルファスSiになる。さらに,レーザーを照射することで多結晶化できる。このチャネル部のSi膜は,真空プロセスを使ったものと比べて遜色ないほどきれいな多結晶体とすることができたので,性能面でも同等レベルに上げることが可能になった。

ニュース・関連リンク

インクジェットでSi-TFTを形成。エプソンの製造コスト革命

(日経マイクロデバイス2006年7月号pp.55-61)

インクジェットでSi TFTを形成,セイコーエプソンとJSRが液体材料によるSi薄膜の形成に成功

(Tech-On!,2006年4月6日)