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用語解説

 PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂は,ナフタレン2,6-ジカルボン酸ジメチルエステル(NDC)とエチレングリコール(EG)を重縮合して合成される熱可塑性ポリエステルである。正式名は,ポリエチレン2,6-ナフタレート。同じ熱可塑性ポリエステルであるPET(ポリエチレンテレフタレート)が,ベンゼン環が一つのテレフタル酸を使っているのに対して,ベンゼン環が二つ連結したナフタレン環の骨格を持っているために,PETに比べて剛直性が高く機械的な特性や耐熱性に優れることからワンランク上の樹脂として位置付けられている。

高機能フィルムやリターナブルボトルに採用

 PEN樹脂の最も一般的な用途は,溶融延伸したフィルムによる電子部材である。この分野ではPETフィルムが多用されているが,PETフィルムに比べて高剛性であることから薄肉化できるなどのメリットがあり,液晶パネルの輝度向上フィルム,耐熱コンデンサ,スピーカ振動板などに普及してきた。

 射出,押し出し,ブローなどの成形品分野では,飲料用のボトル向けの用途開拓が進んでいる。特に,PETボトルに比べ,内容物が樹脂に吸着しにくく,酸素などのバリヤ性に優れるという特徴が評価されて,リターナブルタイプのビール用ボトルなどで採用例が増えてきている。

 代表的なPEN樹脂のメーカーとしては,国内では帝人化成,東洋紡,三菱化学などが,海外ではドイツINVISTA社,韓国Kolon社,インドFutura社などがある。

供給・開発状況

2006/09/28

東大,PENフィルム採用の
フレキシブルな大型ディスプレイを開発

 東京大学は,大面積かつフレキシブルなディスプレイを低コストに実現できる技術をMEMS(micro electro mechanical systems)技術を採用することによって開発した。PEN フィルムからなる透明なプラスチック薄膜と金属薄膜などを重ね,そのうちの2枚の薄膜を画素ごとに静電気力で接するか離すかを制御する。このような構造によって,接した場合にファブリ・ペロー干渉で,特定波長の光のみが出力し,離した場合には光は出ない。柔軟なPENフィルムを重ねる構造のため,ロール・ツー・ロールで製造でき,低コスト化しやすい。

 同ディスプレイデバイスは,反射膜となるAl薄膜,スペーサとなる透明樹脂板などを1mm厚のガラス基板上に重ねた8層構造である。PENフィルムは,スペーサで下層のAl薄膜から浮かせてあり,対向するAl薄膜との間に電位差を生じさせた場合に,静電気力によってAl電極に引き付けられる。静電気力をかけない場合には,PENフィルムの張力によってAl電極から離れてその距離は元に戻る。このような静電気力の有無によるPENフィルムとAl電極との距離の制御は,画素ごとに可能にしているため,画像を表示することができる。

凸版印刷,フレキシブルな
電子ペーパーにPENフィルムを採用


【図1】上段左がアモルファス酸化物半導体によるTFT,上段右が電子ペーパーの試作品,下段はその拡大写真(凸版印刷) (クリックで拡大表示)

 凸版印刷は,2インチ型のフレキシブルな電子ペーパーを開発した(図1)。PENフィルムからなる柔軟なプラスチック基板上に形成したアモルファス酸化物半導体のTFTによって,米E Ink Corp.が開発する電気泳動型の電子ペーパーを駆動させたものである。画素数は80×60。

 アモルファス酸化物半導体(材料はInGaZnO)は,2004年秋に東京工業大学の細野秀雄教授のグループが開発した。この材料を用いたTFTを室温で形成できることに凸版印刷が着目した。従来のアモルファスSi TFTの形成には,+250℃前後の高温プロセスが必要であるため,熱による伸縮が懸念されるプラスチック基板上に形成するのは難しかった。

東大,PENフィルムからなる
人工皮膚をさらに進化


【図2】ネット状になったセンサ・PENフィルムを重ね合わせて人工皮膚を作製(東京大学) (クリックで拡大表示)

  東京大学 染谷隆夫助教授の研究グループと桜井貴康教授の研究グループは共同で,PENフィルムを使って伸張性のある人工皮膚を開発した。卵の表面といった自由曲面上に張り付けることができる(図2)。圧力センサと温度センサを搭載し,300g/cm2までの圧力と,+80℃までの温度を測定できる。実際に卵の表面を今回の人工皮膚で覆い,その上から圧力を加えたときに良好に測定できることを確認した。温度も問題なく測定できるという。これまで両研究グループは圧力センサを搭載し,機械的に曲げられる人工皮膚を開発してきた。ただし,円筒形といった曲面には張り付けることができたが,伸張性はないために自由曲面には対応できなかった。

 今回の人工皮膚は大きさが44mm×44mmのシート状で,圧力センサと温度センサをそれぞれ横方向に12列,縦方向に12列並べたマトリクス状になっている。PENフィルムを用いたプラスチック基板上に作製した圧力センサ・フィルムと温度センサ・フィルムを重ね合わせた構造を採る。フィルムに伸張性を持たせるため,センサ部と配線部以外をくり抜き,「ちょうどミカンを包むネットのような形」の網目状にした。

共同印刷,内容物保護に優れた
耐熱PENボトルを開発

 共同印刷は,透明で内容物の保護に優れたプラスチック製耐熱ボトルを開発した。ボトルに採用した樹脂は,PEN樹脂を含む共重合ポリエステル。PENが持つ耐熱性や紫外線遮断性,耐薬品性といった特性を維持しつつ,ヒートシール性と耐落下衝撃性を付与した。これまで,この種の耐熱ボトルは,プラスチック包装容器では実現困難とされていた。

 同社はこれまで,この樹脂をシート成形することにより耐熱容器として販売してきたが,今回新たに成形加工性を改善しブロー成形によるボトル化に成功した。新しいボトルの耐熱性は,高温充填や充填後の熱処理が可能になる約100℃。従来のPETやPENのボトルに比べて高い上,特に70℃を超える高温下で優れた耐薬品性や非吸着性を発揮する。このため内容物の保護に適し,従来のPETボトルが抱えていた,60~70℃を超えると中身の色素や成分が吸着される,微細なクラックが発生するといった問題を解消できる。

ニュース・関連リンク

【APCOT】フレキシブルな大型ディスプレイ技術,東大が開発

(Tech-On!,2006年6月29日)

フレキシブルな電子ペーパーを凸版印刷が開発,酸化物半導体のTFTで駆動

(Tech-On!,2006年3月31日)

共同印刷,化粧品や食品など向けに透明で内容物保護に優れた耐熱ボトルを開発

(Tech-On!,2005年11月11日)

「曲がる上に伸びる,圧力や熱も測れる」,東大の人工皮膚がさらに進化

(Tech-On!,2005年8月16日)